唐朝に渡った円仁『入唐求法巡礼行記』と宋朝に渡った成尋『参天台五台山記』の文書史料を分析し、その違いを考察した。その結果、円仁は個人の資格で中国を巡礼し、成尋は国家使節の待遇で中国を巡礼したことが判明し、文書の形式や内容、やりとりにもその違いが表れていることが分かった。 具体的に、円仁はほぼすべて個人の力で文書の申請、受領を行い、地方官庁に出向いた。文書の内容も、個人の身分で旅行をするというものであった。それに対して、成尋文書のほとんどは、中国の寺院が成尋に代わって官庁とやりとりをし、内容も皇帝の勅許を得て国家使節として中国国内を巡礼する内容である。
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