本研究は近代中国における地方分権的な国家建設について検証することを目的とした。太平天国と湘軍、淮軍首領が行った地方統治は中央政府から相対的に自立していたが、それらが地域社会にどのような変化をもたらしたのかは不明であった。この点は現地調査によって解明する予定であったが、Covid19の流行および中国における政治情勢の悪化によって訪問が困難となったため、同時代の台湾を対象として分析を進めた。台湾では劉銘伝による近代化事業が知られるが、その担い手となった地方エリートは権限と利益を独占しがちであった。日本統治時代に林献堂は自治の獲得をめざして運動を進めたが、その実現は1980年代以降にずれ込んだ。
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