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2020 年度 実施状況報告書

ポスト黒死病時代エジプト・シリアにおける家族と女性:寄進文書を手がかりに

研究課題

研究課題/領域番号 18K01008
研究機関早稲田大学

研究代表者

五十嵐 大介  早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (20508907)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード女性史 / 家族史 / 寄進 / 文書史料 / マムルーク朝 / エジプト / シリア / イスラーム史
研究実績の概要

2020年度は、ワクフ(寄進)文書を史料として、そこにあらわれる家族形態についての本格的な分析を開始した。折しも、アウラード・アンナース(awlad al-nas)と呼ばれるマムルーク軍人の子孫の社会的役割に焦点を当てた国際ワークショップが12月に開催されたことから、報告者もThe descendants of Mamluks in waqf documentsというタイトルで発表を行った。この発表では、マムルークたちが自身の子孫が利益を得るためにワクフを盛んに設定したというイブン・ハルドゥーンの見解をもとに、現存するワクフ文書から受益者や管財人を指定したワクフの規定がどのようなものであったか探り、マムルーク軍人にとって、自身の資産をワクフとして継承する資格がある「子孫」とは、どの範囲を指すのか、というマムルークの家族/子孫観を明らかにすることを試みた。それにより、以下の四点を明らかにした:①マムルークたちが子孫を受益者に指定する場合、男性が女性の二倍の権利を持つイスラーム法上の相続法とは異なり、男女が均等の権利を有することが常態であった、②一方、管財人に子孫を指定する場合、時に女子を管財人から排除する場合もあった、③男系子孫と女系子孫も基本的には同格に扱われていたが、時に管財人や受益者として男系子孫を女系子孫よりも優遇することも見られた、④ワクフから利益を得ていたアウラード・アンナースは、寄進者自身の子孫のみならず、配偶者(アウラード・アンナースであることが多い)やその兄弟縁者、あるいは寄進者のマムルークの子孫たちなど、幅広い範囲を含んでいた。以上の成果は、ボン大学出版会から刊行される本ワークショップのプロシーディングスに論文として掲載予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ドイツで開催予定であった国際学会が、コロナのためZoomによる開催となったものの、無事開催され、発表も行うことができた。寄進文書の分析を進め、具体的成果をあげることができた。

今後の研究の推進方策

国際会議で発表したペーパーをもとに、英語の論文を執筆する。寄進台帳のデータベース化とその分析を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

コロナの流行により、予定していた海外出張ができなかったため。次年度も海外出張は難しい情勢であるため、日本で研究ができるように海外からの文献の調達に努めるとともに、英語での論文発表に注力し、英文校閲費として支出する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 研究動向 マムルーク朝政治史と国家論に関する近年の研究動向:ファン・ステーンベルヘンの研究から2021

    • 著者名/発表者名
      五十嵐大介
    • 雑誌名

      オリエント

      巻: 63-2 ページ: 205-214

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 書評 熊倉和歌子著『中世エジプトの土地制度とナイル灌漑』(東京大学出版会,2019年)2020

    • 著者名/発表者名
      五十嵐大介
    • 雑誌名

      オリエント

      巻: 63-1 ページ: 62-67

    • 査読あり
  • [学会発表] The descendants of Mamluks in waqf documents2020

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Igarashi
    • 学会等名
      International Conference “In search for a hidden group: Where are the awlad al-nas?”
    • 国際学会
  • [図書] Studies on the History and Culture of the Mamluk Sultanate (1250-1517)2021

    • 著者名/発表者名
      Stephan Conermann and Toru Miura (eds.), Stephan Conermann, Anna Kollatz, Nobutaka Nakamachi, Christian Mauder, Toshimichi Matsuda, Manami Kondo, Wakako Kumakura, Takao Ito, Toru Miura, Mohammad Gharaibeh, Takenori Yoshimura
    • 総ページ数
      326
    • 出版者
      V&Runipress, Bonn University Press
    • ISBN
      978-3847110316

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公開日: 2021-12-27  

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