研究実績の概要 |
研究課題の総仕上げとして、14-16世紀のエジプト・シリアのワクフ(寄進)文書とワクフ調査台帳にあらわれる寄進者の家族成員についての情報の整理に入った。家族(血縁者、姻族、奴隷を含む)に関する受益者規定と管財人規定の基本的なパターンと、そこからあえて外れた、おそらく個人の家族の状況や家族観に基づいた例外的な事例を検討し、それらからマムルークたちの家族観の一端を明らかにすることを試みた。その成果の一部は、ボン大学から出版された論文集Mamluk Descendants: In Search for the awlad al-nasに、‘Who should benefit from my Waqf?’ Mamluks’ Views on Progeny, Lineage, and Family based on their Waqf Stipulationsというタイトルで論文として掲載された。 また、『岩波講座世界歴史09 ヨーロッパと西アジアの変容 11-15世紀』に、マムルークの家族に関する問題を取り上げた論考「西アジアの軍人奴隷政権」を寄稿した。 また、中世日本とマムルーク朝における奴隷・従属関係の比較をテーマにした国際シンポジウム“Strong Asymmetries in Social Relations Compared: The Mamluk Sultanate, Medieval Japan and Beyond”において、ワクフ文書に現れる奴隷・解放奴隷と主人との関係について発表した。
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