研究課題/領域番号 |
18K01011
|
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
小林 寧子 南山大学, 外国語学部, 研究員 (60225547)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | IPO Geheim / アフマディヤ / ムハマディヤ / オスマン朝崩壊 / ヒジャズ問題 |
研究実績の概要 |
2019年度は大きくふたつの作業を行った。 1植民地文書・文献調査 場所は、a. 国立文書館(ハーグ)、 b.ライデン大学図書館、c.インドネシア国立図書館である。a., b.は6年ぶりに訪れたが、両方とも場所もシステムも新しくなっていた。幸い、ライブラリアンやアーキヴィストの助力を得て徐々に適応してカンをつかんだ。すでに閲覧したIPO(マレー語定期刊行物要覧)発行に関連する植民地政府の発行物(IPOの秘密版)とそれに関わる文書。また、1920年代半に英領印度から到来したアフマディヤと、ジャワで始まったイスラーム改革派運動ムハマディヤの関係に関連する文献、文書である。アフマディヤに対する植民地政府の関心は限定的であり、この運動についてはその国際展開により注目した方がいいように思えた。一方、この時期のムハマディヤについてその急進性を警戒する動きが見えて、第2世代の指導者によって運動が政治色を帯びた時期であったことがわかった。c.では、a.とb.で欠けていた史料が見つけたことが成果であった。 2成果発表 1)“What Ahmmadiya Brought to Muhammadiyah: Based on Bintang Islam (1924-1930)”、第11回国際アジア研究者会議(2019年7月21日、ライデン大学)、 2)「東インドにおける定期刊行物の史料としての可能性」益財団法人東洋文庫インド・東南アジア研究部門、東南アジア研究班研究会(2020年3月10日)、3)“Islamic Periodicals in Late Colonial Indonesia: A Picture from the IPO’s Lists of Vernacular Periodicals”. 『アカデミア』(南山大学紀要社会科学編)第18号(2020年1月)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は研究代表者の体調不良で少し躓いたが、2019年度はやや復調し、オランダ出張とインドネシア出張を果たした。特にオランダで収集した文献で一部欠けていたものを、ジャカルタの国立図書館で見つけることができたのは収穫であった。 また、2年度目に入ったことで成果発表ができたのは収穫であった。上記の「研究実績の概要」に記したほかにも、東南アジア学会関東例会(2019年11月9日)では、研究分担者山口元樹の著書の合評会では、研究分担者は討論も担当した。同日にはもう一名の研究分担者も交えて、本科研の打ち合わせを行い連携活動を確認した。同時期の東インドのイスラーム運動に3人が関心を持っており、海外での史料収集も連携して活動ができるというのは幸いである。特にジャカルタの国立図書館は現在新館と旧館に分かれており、両者は4キロほど離れているうえに、史料がやや非体系的に分散している。手分けして作業をしたが、一人では倍の時間がかかったであろう。 ただし、今後の作業については困難も予想される。当初の予定では、2019年度でAdilのスキャン、とその確認作業を終える予定であった。ジャカルタの国立図書館では職員以外はコピーやスキャン作業をすることは許されず、部外者は必要な文献を選び出して複写を依頼するしか方法がない。依頼した文献Adilはかなり劣化しており、保存状況にも問題がある。大量のスキャンを依頼しておいたが、渡されたデータを現物と突き合わせるとあまりに多くの欠落と時系列の混乱があった。欠落部分を補うために再度スキャンを依頼した。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度であり、遅くとも夏までにAdilのスキャンを完了させ、データを使いやすくできるように整理しておきたいと考えていたが、今この報告書を書く時点で見通しが立たない。欠落していた部分のスキャンが済んだら、全体の順番を整理する作業をする予定であった。この作業は2020年度にジャカルタで行うことにしていたが、パンデミックで図書館は閉鎖されてしまった。現在ジャカルタの国立図書館は閉鎖中でいつ再開するかは見通しがついていない。今年度中に再開したら、研究代表者と研究分担者が同時期にそろって作業ができるようにスタンバイする。 それまでは、すでに収集した史料に依拠してできる研究成果を発表できるようにしたい。研究代表者は、Adil(1932~1942)に先立つ時期のイスラーム定期刊行物を用いて、2本の研究論文を執筆する準備に取り掛かっている。また、それぞれの論文は刊行するまでに学会のセミナーや研究会で口頭発表する予定でいる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実績報告書に書いた通り、ジャカルタの国立図書館での作業が当初の予定通り進まなかったため。2019年9月に欠落部分のスキャンを依頼したが、作業は持ち越しになった。2020年度中にそのスキャンデータを受け取り、確認作業をジャカルタでするための費用にあてる予定である。
|