研究課題/領域番号 |
18K01012
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
関根 真保 立命館大学, 衣笠総合研究機構, プロジェクト研究員 (20708698)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 東洋史 / 中国近現代史 / ユダヤ離散史 / 日本植民地史 |
研究実績の概要 |
「上海ゲットー」とは日本軍によって、1943年から終戦まで設置されていたユダヤ人の居住区であったが、この時期のユダヤ人の生活状況を考察することが本研究の主要テーマであり、それこそが、日本のユダヤ人政策の本質を問うことにもなる。 最初に、上海ユダヤ人の戦後の生活、彼らの海外移住への経緯に焦点を絞り、「上海ゲットー」からの解放後の状況の変化を追った。これに関しては、昨年度の史料収集、資料分析を通じて、今年度は論文執筆からその刊行に至った。論文は2019年7月刊行の『アジア遊学236 上海の戦後』(勉誠出版)に掲載された。 次に必要なのは「上海ゲットー」設置以前、つまりユダヤ人がまだ制限を受ける前の1939年から1942年の状況に目を向けることである。今年度は、彼らが比較的自由を享受できた時代の音楽、芝居、メディアなどの文化活動を分析してきた。昨年度に上海出張で得た資料を丹念に追うことで、新たな事実も明らかになってきた。困難な「上海ゲットー」期と比較するうえで、重要なアプローチであった。 最後に、「上海ゲットー」期に一変したユダヤ人の生活状況を分析することで、本テーマは完成に至る。この時期に関して、もちろん本年度も史料収集、分析を少しずつ行っている。とくに本年度はドイツの「国立文書館 Budesarchiv」で史料収集を行い、さらにはベルリンにおいてフィールドワークを行ったことで、上海移住以前のユダヤ人の動向、および反ユダヤ主義に関する様々な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は「上海ゲットー」以前、「上海ゲットー」期、戦後の三期に分けて進められている。「『上海ゲットー』以前」と「戦後」は問題なく研究を進めてきたので、ここまでは順調といえる。ただし「上海ゲットー」期の分析が史料調査も含めてまだ思うように進展していない。 現下の状況では海外出張が難しく、本来予定していた上海でのフィールドワーク、資料収集が実現できなかったことも大きい。さらには東京の国会図書館で数日間の資料収集を予定していたが、これも自粛した。
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今後の研究の推進方策 |
最後に残っている課題は「上海ゲットー」設置期の上海ユダヤ人の歴史研究である。そのための資料収集として、ニューヨークの「ユダヤ歴史研究センター The center of Jewish history」と、ワシントンの「国立公文書館 National Archives and Records Administration」に行く予定にしているが、これもコロナウィルスの状況に左右されるだろう。 資料収集が順調に進めば、史料分析をしたのち、本科研課題を総括した論文を執筆予定である。論文は2021年2月頃に刊行予定である、神戸・ユダヤ文化研究会の機関誌『ナマール(港)』25号に掲載予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来ならば、上海の上海史図書館や東京の国立国会図書館などでの資料調査も計画していたが、コロナウィルス拡大の影響によって、実行できなかった。同様に、数件のシンポジウムも中止となった。結果として、昨年度の科研執行額は予定よりも少なくなった。上記調査は本研究に必要なので、実現が可能ならば、今年度に実行することを計画している。
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