上海に移住してきたユダヤ人は、結果的に日本占領下で、失うはずの命をつなぐことができた。この事実から日本では、「上海のユダヤ避難民は日本が救出・保護した」という言説が、2000年代初頭に定着した。 しかしその後の上海ユダヤ避難民の歴史研究から新たな事実が見えてきた。また、本研究が、「上海ゲットー」の前と後を比較することによって、上海のユダヤ人の生活状況が一変したことを提示した。さらに本研究は、戦後におけるユダヤ人の国外移住の経緯にまで考察対象を広げた。この「上海ゲットー」以降の時代を考慮するならば、「上海のユダヤ避難民は日本が救出・保護した」という言説もおのずと限界が見えてくることがわかった。
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