研究課題/領域番号 |
18K01014
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤井 信之 同志社大学, 人文科学研究所, 嘱託研究員 (90724360)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 古代エジプト / 前1千年紀 / 軍事勢力 / 神官団 / 支配体制 |
研究実績の概要 |
本研究は、前1千年紀のエジプト社会において支配層を形成していた軍事勢力と神官団の動向を、彼らが残した碑文を主な史料として分析することによって、前1千年紀エジプトの衰退史観に再考を迫ることを目的とする。 補助事業期間の前半は、国内・国外に所在する史料を収集・整理して、前1千年紀エジプトの軍幹部称号所持者と神殿上位層の神官称号所持者の正確なプロソポグラフィを作成することに努める計画であった。そこで2018年度は、まずオックスフォード大学図書館所蔵の未公刊資料であるウィルキンソンのマニュスクリプトを調査した。その結果、破壊されるなどして今では見ることが出来なくなったサッカラ北部にかつて存在した前4世紀の墓の碑文から、当時の軍幹部や神官の情報を得ることができた。この調査の結果は、今後予定している資料調査の結果とあわせて公表する予定である。また英国滞在の機会を利用して、英国内の幾つかの博物館を訪れ、本研究の進展に有益な碑文を確認することができた。 国内では天理参考館所蔵の資料を調査した。その成果を第47回古代エジプト研究会で報告した。またこの調査結果の一部は『天理参考館報』に公表予定である。また以前から進めていた松岡美術館所蔵の彩色木棺の研究を進め、特殊なヒエログリフ用例を含む碑文を解読した。この成果は2019年度中に学会誌に投稿する予定である。 本研究は、前1千年紀の西洋中心的な世界史像に再考を迫ることも目的としている。そこで2018年度は、前1千年紀後半の後期王朝時代(Late period)の最盛期と目されるサイス王朝(エジプト第26王朝)について、古代の文献、特に旧約聖書やヘロドトスの『歴史』に同王朝がどのように描かれているのかを検討した。この研究成果の一部は、2019年4月に同志社大学で開催される国際会議において公開講演として発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は研究初年度ということもあって、計画では国内で収集可能な資料を収集・整理することに努める予定であったが、幸い渡英の機会を得ることができ、次年度(2019年度)に行う予定であった海外での調査を繰り上げて実施することができた。さらに目的としていたサッカラ所在の墓の碑文だけでなく、私の知見に無かった碑文の存在も知ることができた。予想を超える数の資料の写真撮影ができたことは大きな収穫であった。その他、入手し得たデータを、この時期の基礎研究となっているChevereauやBuhlの著作に提示されているプロソポグラフィ的データと照合し、先行研究のデータの不備を確認することもできた。今後もデータを増やしながら、この作業は続けていくことになる。 この様に資料の収集と検討が進んでいることから、研究はおおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様に、今後も国内・国外の資料を収集・整理し、先行研究に提示されているデータと照合しながら、新たな史料的証左を加えたより正確なプロソポグラフィ的データを作成していく。ここ数年、欧米ではこの時期のエジプトの特に軍幹部の動向に関するそれぞれ見解を異にする新たな議論が展開されている。これらを踏まえ、収集し得たデータから当時の軍幹部らの動向を検討していく。 また既に口頭で発表した議論や検討を終えた資料に関しては、順次学会誌や紀要に発表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定して書籍が、3月末までに海外から送られてこなかった。従って、次年度に書籍購入代として使用する。
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