研究課題/領域番号 |
18K01014
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
藤井 信之 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (90724360)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 古代エジプト / 前1千年紀 / 軍事勢力 / 神官団 / 支配体制 / 第3中間期 / 後期王朝時代 / 衰退史観 |
研究実績の概要 |
本研究は、前1千年紀のエジプト社会において支配層を形成していた軍事勢力と神官団の動向を、彼らが残した碑文を主な史料として分析することによって、当時のエジプトの支配体制を明らかにするとともに、前1千年紀エジプトの衰退史観に再考を迫ることを目的としている。 本年度も国内・国外に所在する史料を収集・整理して、前1千年紀エジプトの軍幹部称号所持者と神殿上位層の神官称号所持者の正確なプロソポグラフィを作成する作業を進めた。特に公刊されている翻刻資料を、入手しえた写真など画像資料と突き合わせて、その精度の確認を行った。また本年度はメトロポリタン、ブルックリン、ボストンなどアメリカ東部の美術館を訪れることができ、画像で確認できていなかった碑文を実見することができたので、これまでに収集したデータの一部をより精度の高いものにすることができた。引き続きデータの収集と分析を進めていく。国内所蔵品については、後期王朝時代の国王祭祀に関わるものと考えられる東京大学総合研究博物館所蔵のネクタネボ隼像について調査し、その成果を日本オリエント学会で発表した。 本研究は前1千年紀エジプトの衰退史観に再考を迫ることを一つの目的としているが、この目的を果たす研究の一環として、これまでに収集・整理しえたデータを用いて、第3中間期におけるテーベの支配層の墓制の変遷とリビア王朝の支配体制との関係を考察した。本年度の研究発表では、テーベの墓制の変遷しか報告できなかったが、次年度にはリビア王朝の支配体制との関係性を明らかにする研究発表を行い、リビア王朝時代を混乱期とする歴史観には再考の余地があることを明らかにしたいと考えている。また本年度も東京大学付属の研究部門U-PARLが進める研究プロジェクトに協力し、プロソポグラフィを用いたエジプト学における歴史学的研究のあり方について講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの新型コロナ禍の影響で資料の収集に手間取ったこともあり、その整理・分析にやや遅れが生じている。整理・分析が可能となったデータを用いた考察はある程度進み、研究発表も行ってきたが、口頭発表した研究の一部はまだ論文にまとめるまでには至っていない。また実見するなどして確認したい資料もあることから、研究期間の延長を申請することにした。
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今後の研究の推進方策 |
資料の収集・整理、及び作成したデータの分析・考察をさらに進めていく。可能であれば、史料を実見するべく調査に出向きたいと考えている。また既に口頭発表した研究を論文にまとめるとともに、まだ発表していないこれまでの研究成果を発表できるようまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍の影響が長引いたため、予定していた国内・国外での資料調査が遅れた。次年度も、可能であれば調査に出向くために使用する。また紙媒体やデジタルデータとして資料を入手するため、および資料が発表されている出版物を購入するために使用する。
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