研究課題/領域番号 |
18K01014
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
藤井 信之 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (90724360)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 古代エジプト / 前1千年紀 / 軍事勢力 / 神官団 / 支配体制 / 第3中間期 / 後期王朝時代 / 衰退史観 |
研究実績の概要 |
本研究は、前1千年紀のエジプト社会において支配層を形成していた軍事勢力と神官団の動向を、彼らが残した碑文を主な史料として分析することによって、当時のエジプトの支配体制を明らかにするとともに、前1千年紀エジプトの衰退史観に再考を迫ることを目的としている。 本年度は、これまで収集・整理してきた史・資料から作成したプロソポグラフィ的データのうち、年代比定に問題のある資料の検討を主に進めた。幾つかの資料については、これまで考えられていたのとは異なる年代を提案できそうである。例えば、これまでリビア王朝時代(第22王朝~第24王朝)とされてきたものが、最後の独立期(第28王朝~第30王朝)まで年代が下がると判断されるものがあった。しかし年代を絞り込むことが難しく、立論のデータとして採用しづらいと判断されるものもあった。これまでに口頭発表してきた研究成果を論文にする折に、この作業で得られた成果も合わせて発表したいと考えている。軍事勢力と神官団が密接な関係を持つようになったのは、第3中間期のことであった。なかでもリビア王朝時代にこの傾向はエジプト全土に及んだと考えられる。この点に留意してリビア王朝が成立する過程を碑文史料に基づいて考察した論文を学術誌に投稿した。 本研究は前1千年紀エジプトの衰退史観に再考を迫ることを一つの目的としているが、この目的を果たす研究の一環として、これまでに収集・整理しえたデータを用いて、第3中間期におけるテーベの支配層の墓制の変遷とリビア王朝の支配体制との関係を考察した研究発表を行い、リビア王朝時代を混乱期とする歴史観には再考の余地があることを指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの新型コロナ禍の影響で史・資料の収集に手間取ったこともあり、その整理・分析に遅れが生じたままであるため、やや遅れていると判断される。またデータの一部を保存していたディスクが物理障害で壊れ、データの復旧に時間がかかったのも影響した。しかし研究を進める中で重要な問題となっていた年代比定に疑問のある資料の一部に関しては検討を進めることが出来たので、データの精度は上げることが出来た。今後は、これまでの成果を発表することに注力していきたい。研究の発表および公刊に費用が必要なので研究期間の延長を申請した。
|
今後の研究の推進方策 |
まだ見ることができていない資料もあるので、可能な限り資料の収集は続けたい。今後は既に口頭発表した研究を、分析可能となったデータを用いてより精度の高い論文にまとめて発表していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
資料収集に遅れが生じ、論文執筆が遅れているため。資料に関わる文献の入手と研究発表に必要な費用に充てる。
|