研究課題/領域番号 |
18K01015
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研究機関 | ノートルダム清心女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 真 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (60400610)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 清朝 / 八旗 / 科挙 / 康煕 / 雍正 / 進士 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,清朝前半期(1636~1795)を対象に,支配層である旗人(八旗に所属する満洲・蒙古・漢人の人びと)の文科挙応試(受験)の実態について検討することにより,かれら旗人が中国の伝統的な科挙制度をどのように受容し,また利用していたのか,清朝の旗人社会において,漢人の儒教文化がどのように機能していたのか,を明らかにすることである。 2019年度は,昨年度と同様に,どのような旗人が文科挙に応試していたのかを探るための基礎的なデータの収集を継続した。対象としたのは,各種政書・地方志である。昨年度はおもに入関前から康煕年間(1636~1722)の旗人を対象としたため,本年度はそれに加えて雍正年間(1723~1735)の旗人を対象とした。 康煕年間の旗人進士が,ある年代には権門(有力旗人)の子弟が数多く合格しており,出自的にも経済的にも優遇されていたであろうかれらが文科挙に応試していた事実から,当時の清朝宮廷内において,科挙に代表される漢人文化の存在がどのように位置づけられるかについて考察した。また,旗人進士同士の婚姻関係などを含め,文科挙応試と進士の称号の獲得とが,漢人の有力大臣との人的関係の構築に一役買っていた可能性も含め,科挙に期待されるその機能について考察した。 それに対して雍正年間には、新皇帝・雍正帝の母系氏族や,皇帝の家政機関である内務府に近い立場にある旗人の科挙応試が確認できる。こうした傾向が,当時の宮廷内の権力構造や,旗人社会における漢人文化の漸進的受容,あるいは生存戦略としての積極的受容という面と密接に関連している可能性を踏まえ,多面的な分析をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度同様に,旗人進士の出自・履歴についてのデータを収集している。雍正年間の旗人進士については,データを得ることのできる史料が康煕年間までと比較して豊富となるため,かれらの出自・履歴については概ね確定し得た。 しかしその一方で,康煕年間以前の旗人進士については依然として未確定の者も少なからずおり,時代ごとの比較をおこなうためには,今後も諸史料の網羅的博捜を継続する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方法としては,旗人進士の出自・履歴に関するデータを継続して収集し,各時代ごとに比較をおこなった上で,各時代の宮廷内の権力構造の面,さらには旗人社会における漢人文化の漸進的受容・生存戦略としての積極的受容という面から分析していく。 また旗人進士のみならず,旗人挙人をどのように位置づけていくかという問題についても考えていく。旗人進士と比較して,旗人挙人はさらに出自・履歴の確定が困難な場合が多いが,本年度は清代の教育(科挙関係を含む)に関する大型史料集の刊行が予定されており,より充実したデータを収集し得る可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの流行およびその影響により,本研究のために必要な大型史料集『八旗文献集成(第三輯)』(全30冊、2019年12月)の刊行が延期,納品が遅延された。また2020年春季休業中に予定していた研究機関における史料調査を取りやめたため,旅費が使用できなかった。 2020年度には,本研究の遂行に寄与するであろう大型史料集『清代教育档案文献(第1編・第2編)』(全58冊)も刊行予定であるため、旅費はこちらの購入費に充てる予定である。
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