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2020 年度 実施状況報告書

清朝前半期における旗人の科挙応試に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K01015
研究機関ノートルダム清心女子大学

研究代表者

鈴木 真  ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (60400610)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード康熙帝 / 八旗科挙 / 翰林院 / 起居注 / 旗人進士 / 揆叙 / 清朝
研究実績の概要

本年度は,文科挙に応試した旗人(旗人進士)について,これまでの研究で蓄積したデータを活用し,まず康煕朝(1661~1722)においてかれらが具体的にどのような官歴を有していたのか,またかれらが実際に康煕帝や宮廷内の漢人官僚らから,文官としてどのような評価を得ていたのかという問題を確認した。
なおその際には,一般的な旗人進士と対比するために,科挙出身ではない旗人官僚およびその官歴に焦点を当てた。その旗人官僚が揆叙という高級官僚である。揆叙は康煕朝の権臣ミンジュ(明珠)を父にもち,また中国文学史上に名高いシンデ(納蘭性徳)は同母兄にあたる。揆叙は康煕帝の側近として長期間に亘って起居注官をつとめ,度重なる巡幸にもほぼ皆勤で扈従した。さらに揆叙は旗人進士ではなかったが,旗人進士が最も必要とされていたと考えられる翰林院の要職を長く歴任したことが確認できた。
この揆叙のように,非科挙出身の旗人でありながら翰林院の高官をつとめた旗人は,かれ以外にも少なからず確認できる。この事実が意味しているのは,康煕朝の詞臣が,一定の詩文の才能や文学的教養を前提としながらも,有力旗人の家系の出身であるという点が重視されて,翰林院に配置されていたと考えられることである。
しかしその一方で,有力旗人の家系の出身者が,文科挙に応試している事例も多数確認することができた。このことは,満洲人の王朝である清朝が,漢人を統治するために科挙を積極的に利用しようとしていたことを示唆しており,この点については揆叙のような非科挙出身の旗人官僚を他にも取り上げて,比較して分析する必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

康煕朝の旗人進士の出自の比定・官歴の追跡はおおむね終了し,それらから判明した事実・傾向を,当該時期の宮廷政治史と結び付けて考察を深め,八旗科挙がどのように機能していたか,という点については研究が進展している。その一方で,雍正朝以降に関しては旗人データの洗い出し作業が当初の予定よりも遅れており,当該時期の宮廷政治史と結び付けた分析が進んでいないため。

今後の研究の推進方策

雍正朝以降の旗人進士のデータ収集・分析を急ぐとともに,それらの成果を当該時期の政治史研究と結びつけて考察する。また,旗人に関するデータが豊富に含まれていると考えられる『八旗文献集成(第三輯)』の刊行を待ち,康煕朝以前の旗人進士に関するデータも,逐次補強していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた主な理由は,新型コロナウィルスの防疫上の関係で,国内の研究機関での史料調査をおこなわなかったこと,また八旗関係の大型史料集(『八旗文献集成(第三輯)』全30冊,予価412,500)の公刊が再び延期され,年度内の購入ができなかったことが挙げられる。
なおこれらの予算は,2021年度に上記の大型史料集の購入費用に充当する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] 「康熙帝と揆叙」2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木真
    • 雑誌名

      『社会文化史学』

      巻: 64 ページ: 頁数未定

    • 査読あり

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公開日: 2021-12-27  

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