本研究は,清朝前半期(17~18世紀)において,いかなる出自・特徴の旗人が科挙に応試(受験)していたのか,そして旗人にとって科挙合格が,それ以後の官歴とどのように関連していたのかを明らかにしようとした研究である。 科挙に応試した旗人の出自は,零細な家柄の者,有力氏族の子弟や官界の高官を近親に持つ者など多岐に亘っており,当時の旗人社会では儒教的教養の修得が広く進行していた様子が窺える。また有力大臣との婚姻関係の構築や,皇子らの王府への配属の契機となるなど,旗人にとって科挙合格とは,官僚組織の公的な栄達ルートとしての位置付けに留まらず,八旗内部における権力基盤の構築・強化の面でも機能していた。
|