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2021 年度 実施状況報告書

拓本精査と画像アーカイブ化による突厥碑文の歴史学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K01017
研究機関神戸女子大学

研究代表者

鈴木 宏節  神戸女子大学, 文学部, 准教授 (10609374)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード突厥 / 突厥碑文 / モンゴル / トルコ / 遊牧民 / 中央ユーラシア / 北アジア / 突厥文字
研究実績の概要

本年度の研究調査はおもに図書文献を収集し、それらを分析することが主軸となった。すなわち、突厥碑文の拓本を使用した従来の研究成果を利用して、概説論文を刊行することができた。当該論文は、突厥第二可汗国の支配層、貴人が残したキョル・テギン碑文、ビルゲ・カガン碑文、またトニュクク碑文を拓本から読み直した諸論考の成果をまとめたものである。
まず、中央ユーラシア・北アジアの遊牧帝国の系譜に突厥を位置付けるため、突厥の社会構造(左右中央軍の三軍体制、十進法に基づく騎兵供出単位の積み上げ構造)を概観した。つぎに、諸史料から突厥の称号に焦点をあて、支配層の称号が基本的には世襲される状況を確認した。ただし、これまで王子と理解されてきたテギン号などでは、単に世襲では説明できない事例があり、個別に検討することで、可汗国の特徴を知りうる点を強調した。そして、拓本史料から解読される具体的な部族構造を復元し直し、さらに君主たるカガンと諸部族間の紐帯ともなったタルカンという官称号保持者を網羅的に検討した。その結果、突厥時代のカガンは左右翼を担当させる血縁者の他に、その政策を実行するためのスタッフを支配下の部族から徴発する必要があった。その際にカガンから広く必要な人材に授与されるのがタルカンであり、タルカンは可汗に近侍する侍衛としての役割を果たしていた。
かかる機序が突厥可汗国に存在していたことは、中央ユーラシアの諸遊牧帝国との共通性を見出すことにつながるものと考えられる。今後、こうした通時的な遊牧帝国の特徴を明確にするためにも、拓本研究を継続してゆく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本年度も新型コロナウイルスの感染拡大のため、研究活動に制約が生じた。本研究は他府県の学術機関における所蔵拓本調査を前提とするが、緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置の期間中は調査を見送らざるを得なかった。具体的には、上掲の措置がとられている場合、各研究期間に赴いての拓本調査、あるいはアーカイブ化に向けての協議、写真撮影などの実務が不可能となってしまった。

今後の研究の推進方策

全国的に緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置が発令されていない間に、国内の学術機関と連携をはかり、まずは拓本の撮影を実現させたい。
具体的には、広島大学文学部所蔵のキョル・テギン碑文の拓本である。これは国内に数点の所蔵があるものであるが、いまだ学術機関のレポジトリなどで詳細な写真が公開されていない。また、ほぼ同時代のビルゲ・カガン碑文とは、テキスト上共通する文章が見られ、あわせて参照すべきものとなる。ただし、後者については、国内では国立国会図書館が主要な所蔵先ではあるが、残念ながら写真撮影や公開の許可がおりていない。
現在、広島大学の所蔵担当者とは連絡がついており、撮影業者との打合せの後に具体的な作業を実施できるように調整している。7月から8月にかけて国内出張をするとともに、拓本写真を撮影、具体的な公開へと手順をすすめてゆきたい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの感染状況が悪化したため、研究計画に遅滞が生じてしまった。そのため、次年度の使用を申請するものである。
今年度は、国内出張のための出張旅費(10万円程度)、拓本撮影代(60万円程度)、その他の史料などへの支出(10万円程度)を予定している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] トルコ系遊牧民の台頭2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木宏節
    • 雑誌名

      荒川正晴(責任編集)『岩波講座 世界歴史』(中華世界の再編とユーラシア東部 四~八世紀)

      巻: 6 ページ: 115-145

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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