最終年度は、広島大学と立命館大学に所蔵されている突厥文字碑文の拓本を写真撮影し、そのレプリカ(複製品)を作成することができた。 前者は、広島大学大学院・人間社会科学研究科・東洋史学研究室で保管されている鴛淵一蒐集品の4軸からなるものである。写真撮影を外部業者に委託し、精密な画像データとともに原寸大の複製品を作製し、アーカイブに備えている。 一方の後者、立命館大学図書館(平井嘉一郎記念図書館)では、闕特勤碑文2軸(東西面のみ)ならびにカラバルガスン碑文の拓本(12点)が所蔵されていた。これらについて広島所蔵拓と同じく、撮影により精密な画像データと原寸大の複製品を作製した。 このうちカラバルガスン碑文の拓本については、立命館大学授業担当講師の牛根靖裕氏と共同して、所蔵データの整理を行った。これによって資料のアーカイブ化を進めるとともに資料アクセスの改善をはかることができた。これらの写真については現在、資料紹介論文を共著にて準備中である。 以上、闕特勤碑文については画像データとレプリカの準備が完了した。ただし、これらを電子情報としてアーカイブすることまでには至らなかった。画像データならびにレプリカをどのように保管するかは今後も検討するつもりである。なお、碑文テキストの精査により、闕特勤碑文の建立について二三の検討課題を発見することができた。建立された8世紀前半の唐王朝をめぐる国際関係のなかで、突厥とともに吐谷渾の存在を見いだせる記述が存する。唐が異民族に対応する際、どのような外交手段を持ち得ていたのか、一方、突厥はそれに対してどのような反応をしたのか。今後の突厥研究につなげてゆく見通しをつけられた。
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