研究課題/領域番号 |
18K01024
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
菅 美弥 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50376844)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アメリカ・センサス / 調査票 / 環太平洋 / リンケージ / 移民・移住 |
研究実績の概要 |
本研究の課題1、マイノリティへの調査実態の経年的な検証については、センサス調査票を史料として、建国期から1880年までの調査実態の変容に関するこれまでの研究の進展を、単著『アメリカ・センサスと「人種」をめぐる境界――個票にみるマイノリティへの調査実態の歴史』(2020年1月、勁草書房、608頁)の一部分に反映させた。課題2としての、センサスと日米の史・資料とのリンケージについては、1870年センサスに記載のあった「ワカマツ・コロニー」を始めとする初期の移住者に関して、日本側とアメリカ側の様々な史料の収集を行った。その途中経過の成果発表として、アメリカ・カリフォルニア州で開催されたワカマツコロニー150周年記念祭と韓国アメリカ学会での国際大会において、英語による発表・招待講演を行った。従来ナショナルな文脈で検証されてきたアメリカ・センサス史と、出移民研究への関心が希薄となっている日本人移民・移住史をつなぐ作業の経過発表を行うことが出来た。それにより、多くが日本語を読解しない日系アメリカ人3、4世のオーディエンスやコミュニティに対して成果の共有やアウトリーチが可能となった。さらに、2019年12月には成果の一部を、『遥かなる「ワカマツ・コロニー」―トランスパシフィックな移動と記憶の形成』中に、第1章「トランスナショナルな移住・移動と『移民』送り出しネットワーク――会津若松・北海道・横浜・カリフォルニア」(13頁~58頁)として公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に進展しているといえる最大の理由は、単著と分担執筆の形で研究成果を公刊したからである。まず、『アメリカ・センサスと「人種」をめぐる境界―個票にみるマイノリティへの調査実態の歴史―』(2020年1月、勁草書房、608頁)を刊行した。また、『遥かなる「ワカマツ・コロニー」―トランスパシフィックな移動と記憶の形成』中に、「トランスナショナルな移住・移動と『移民』送り出しネットワーク――会津若松・北海道・横浜・カリフォルニア」(2019年12月、彩流社、13頁~58頁)を分担執筆した。同時に、国際学会である韓国アメリカ学会や、アメリカ・カリフォルニア州で開催されたワカマツ・コロニーの150周年祭での英語による講演を通じて、これまでの研究の成果を発表し、アメリカの日系人コミュニティへのアウトリーチや韓国のアメリカ学会研究者との研究交流を行った。さらには、昨年度の課題であった、崩し字で書かれている日本側の幕末・明治初期の史料の読解については、専門家による崩し字の読解セミナーに毎週通うことで、史料解読のペースが飛躍的に上がった。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカセンサスの新しい歴史像を描く最終年に当たるため、環太平洋における移住・移動の全体像と細部の双方を包括的に把握する。そのために、査証や新聞史料、アメリカ議会議事録等の継続的な収集とその検証を行う。また、データベースを駆使して上海、長崎、兵庫、横浜などのアジアにおける史料を収集していく。さらに自らの崩し字の読解力をさらに向上させるほか、中国語を理解する研究補助の助けも借りることで、多言語の史料を検証対象とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を予定よりも大幅に進展させるなかで、作業効率を一層上げるためさらに研究補助を増やすこととした。
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