研究課題/領域番号 |
18K01024
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
菅 美弥 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50376844)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アメリカ・センサス / 調査票 / 環太平洋 / リンケージ / 移民・移住 |
研究実績の概要 |
アメリカ・センサスの新しい歴史像を描くため、センサス調査を行う人間(調査員)側に焦点を当てて研究を進めた。日本人への調査実態と記載の背景を考察するためである。この点に関連して、先行研究を広くみたところ、1870年 サンフランシスコのチャイナタウンでの中国人への調査は、調査員の人種意識やコミュニティにおける人間関係といった調査員の属性によって、きわめて異なる調査が行われたとの分析を見つけた。具体的には調査員ヘンリー・C・ベネットは自分が住む地区の調査に際して、知り合いのボランティアを見つけて、通訳として働いてもらった。自身が住民であったこととおそらくはアシスタントの助力で、ベネットはもう一人の調査員とは異なり、中国人の姓名の順を正しく記入していたということである。こうした研究を参考にして、1870年にはカリフォルニア州にはわずか30名程度の規模であった日本人への正確な記載があった理由を、調査員のコミュニティ、情報をどのように共有していたのかという側面、つまりは調査員のライフヒストリーから新しいアメリカ・センサス史像を叙述するべく研究を進めた。 また日本人移民・移住史に関しては、環太平洋における移住・移動の全体像と細部の双方の包括的な把握に努めた。査証やアメリカ議会議事録等の日米のデジタル化された史料の継続的な収集とその検証のほか、複数の新聞史料データベースを駆使して、センサスと人の移住・移動に関する報道の広範な収集と検証を行った。特に、開港後の居留地のなかで監視の目が弱かった可能性の高い函館に注目して、使用人の渡航が許可される前の人の送り出しの試みとその人的ネットワークについて史料収集を行い検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で予定されていた学会報告等の機会はなくなったものの、センサス史の全体像の把握と、日本側の資・史料収集の双方を着実に行っているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後しばらくはアメリカへの調査は不可能だと思われるため、オンラインデーターベースを駆使して史料収集と分析を進める。また、作業に際しては、昨年から収集能力を向上させている研究補助に継続して依頼し効率を上げることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で国内外への調査が不可能になり、旅費の支出がなくなったため。今年度も海外出張は厳しい状況が続くことが予想されるので、オンラインでのデータベースに新規入会し、データベース使用料等や、研究補助の人件費として使用する計画である。
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