研究課題/領域番号 |
18K01026
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
大清水 裕 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (70631571)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ローマ / 北アフリカ / ヌミディア / マウレタニア / デロス |
研究実績の概要 |
今年度は、前年度末に行ったギリシアでの現地調査の成果を踏まえて、エーゲ海沿岸地域で発見されたヌミディア王やマウレタニア王の名を持つ碑文群の歴史的意義について研究を進めた。とくにデロス島で発見されたヌミディア王マシニッサの名を持つ碑文群については、先行研究におけるそれらの位置づけを整理し、関連史料の精査をすすめている。研究計画の最終年度となる次年度には成果を発表できる見込みである。 また、以前行ったアルジェリアでの事前調査の成果も加味して、マウレタニア王プトレマイオスの死とマウレタニア王国の属州化をめぐる論争についても研究を進めた。先行研究の整理と関連史料の精査に加えて、マウレタニア王国におけるヘレニズム文化の影響を示す彫像群についても関連文献を収集・精査し、その意義について検討を進めている。このテーマについては、年度末に研究会で報告し隣接分野の研究者から意見をいただく予定であったが、新型コロナウィルス感染症が拡大した影響で研究会の開催が中止されたため、成果発表には至らなかった。次年度には別の形で研究成果を示したいと考えている。 このほか、中部大学で開催されたシンポジウム「帝国とキリスト教」において、「ローマ帝国におけるキリスト教徒迫害の諸相――ネロ治世とディオクレティアヌス治世を中心に」という報告を行った。プトレマイオス王の死に関連して分析したタキトゥスの『年代記』に関する研究成果の一部を活かしたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、上記の通り、ヌミディア王マシニッサの名を残すデロス島出土の碑文群と、マウレタニア王プトレマイオスの死とマウレタニア王国の属州化について研究を進めた。いずれも研究成果を間もなく公表できる段階にあり、研究はおおむね順調に進展しているものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き、既述のテーマを論文として公表できるよう作業を進めたい。 また、既述のテーマに加えて、ヌミディア王国最後の王ユバ1世と共和政ローマの間の関係を分析対象として、ヌミディア王国とローマの関係について検討を進める。ローマの「対外クリエンテラ」という枠組みの中で、その従属国と位置付けられがちだが、これまでに検討したユバ1世の祖たるマシニッサや、その子孫たるマウレタニア王ユバ2世やプトレマイオスの動向分析からは、ヌミディア王国を単なる共和政ローマの従属国とみなすことは難しくなったと感じている。先行研究の整理と史資料の分析を進めていきたい。 なお、研究の進展のため現地調査を計画しているが、新型コロナウィルス感染症の世界的拡大のため、実現できるか否か判断が難しくなっている。代替措置を模索しつつ、研究の進展を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での現地調査を計画していたが、資料購入を優先し、現地調査を次年度に繰り越したため。
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