本研究は、ビスマルクが独仏戦争(普仏戦争)時に当時の国際海洋ルールであった1856年の「パリ宣言」を引き合いに出して交戦国フランスや中立国イギリスに対して必死に外交攻勢をかけようとしていたことを示す未公刊史料を手掛かりに、「パリ宣言」が絡む海洋問題という視角からこの時のビスマルク外交をグローバルな文脈で再検討するものである。三年目にして最終年度にあたる本年度は、①これまでの国内外の文書館や図書館での史料調査に伴う追加調査、②研究の総括と研究成果の公開を目標に設定していた。
①については、昨年度末に予定していたが新型コロナウィルスの蔓延に伴ってキャンセルを余儀なくされたフライブルクのドイツ連邦軍事文書館やベルリンのドイツ連邦文書館での史料追加調査に加え、アメリカ国立公文書館とアメリカ議会図書館での史料調査を行うつもりであった。しかしながら、新型コロナウィルスの蔓延に伴う危機的状況が一向に終息の気配を見せず、海外渡航が著しく困難な状況であったため、海外での史料調査そのものを断腸の思いでキャンセルした。
②については(上記の事情から決して十分とは言えないまでも)これまでに国内外で収集した史資料を基に研究成果を1冊の著書にまとめた。それは、ドイツ帝国創建150周年にあたる2021年1月に『グローバル・ヒストリーとしての独仏戦争:ビスマルク外交を海から捉えなおす』(NHKブックス 2021年)として刊行された。また、その内容の一部を(学会発表には間に合わなかったので)令和2年度岡山大学公開講座「ドイツ近現代史入門:日本から見た独仏戦争(1870-71)」(2021年2月27日実施)にて紹介した。
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