研究課題/領域番号 |
18K01033
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井内 太郎 広島大学, 文学研究科, 教授 (50193537)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 海事史 / 船乗り / 船上遺言書 / ギニア航海 / エゴドキュメント / R.ハクルート / R.エデン |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである。 (1)1553年~1564年にかけて行われたギニア航海の実態について分析を行った。従来、この時期のギニア航海に関しては、R.ハクルートが著した『主要な航海』(1589年)の記述が基本史料となってきた。しかしながら、今回、残存する史料を検討した結果、その基になった史料が、R.エデンが著した『新世界ないし西インドに関するここ数十年間の記録(1555年)であり、そこから複写する際に省略箇所や記載の誤りが少なからず認められることが明らかとなった。そこで、当時のギニア航海に関する残存史料を渉猟し、ハクルートの描いたギニア航海の記述の修正を行い、より史料に即した航海の実態を明らかにした。 (2)これまでのギニア航海に関する記述は、船長などの士官層の記述や記録によるとこが多く、その間に一般船員たちがいかなる航海をおこなっていたのかについては、殆ど検討されてこなかった。そこで、本研究では、船上遺言書を用いながら、一般船員たちが見たギニア航海について検討を試みた。今回は史料の検討に時間を要するため、1553~4年の第1回航海における船上遺言書の分析を、(1)で明らかにしたギニア航海の実態と照らし合わせながら、ギニア航海時の一般船員たちの航海の実態や、船上共同体のあり方について検討を行った。 (3)研究成果の公開については、2018年5月に三田史学会(於:慶應義塾大学)、2018年8月に西欧中世史研究会(於:お茶の水女子大学)において研究発表を行い、また『西洋史学報』(広島西洋史学研究会)に論文を投稿し、査読の結果、採択が決定し、2019年8月に発行の予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果を査読付き雑誌『西洋史学報』に投稿し、掲載が決定したが、発行が2019年8月にずれ込んだのは、予定外であった。しかしながら2019年5月に三田史学会(於:慶應義塾大学)、8月に西欧中世史研究会(於:お茶の水女子大学)にて成果の報告をおこなったので、研究計画は概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、1553~1564年に9度に渡り行われたギニア遠征と交易の間に作成され、現在に残っている93通の遺言書の内容の本格的な検討に入る。 1) 船上遺言書の作成手続き:遺言者は船上遺言書をいつの時点で作成したのか、誰が遺言書を書き留めたのか、最終的に遺言書の検認はいかにして行われたのか。2) 遺言書の形式を分析し、当時の一般的な遺言書と比較を行う:専門の書記者ではなく、船員が記録したことにより、いかなる問題が生じたのか検討する。特に遺言者に読み書きができない船員がいた場合、いかなる対応が取られたのか検討する。3) 遺言書の内容の検討:何を誰に遺しているのか、遺言者と遺贈者との関係について検討する。遺贈物として何を遺していたか検討しながら、彼らの経済状態について検討する。4) 遺言書のデータベース化を行う。5) 学会発表2019年8月に広島西洋史学研究会大会において報告を行う予定である。また来年度に、広島史學研究会大会において日本史・東洋史の研究者と近世海事史研究のシンポジウムを行うので、その準備にとりかかる。2020年2月にThe National Archive in KewならびにBritish Libraryにおいて、船上遺言書ならびに海事史関係の史資料の渉猟を行う予定である。6) 2019年8月9~11日に開催される広島西洋史学研究会大会において、本年度の研究成果の報告を行う。7) 広島史學研究会が発行している『史學研究』に10月に論文(単著)を投稿予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
消耗品等を効率的に使用したため,当初予定より多く次年度使用額が生じたため。
|