2022年度の研究は、申請時に予定していた研究期間を1年延長していただくことで、継続して進めることが可能となった。Covid-19の影響を完全には拭い去ることができず、遅れ気味であった研究課題であるが、通常は対面開催である学会で、2022年度まではインターネット上での参加も可能とする状況が維持されたことを活かし、イタリア(EUARE2022)やスペイン(Seminario "Identidades Cambiantes Modernidad y Religion. De lo individual a lo colectivo")で開催された国際学会やセミナーで口頭報告を行った。報告を通じて、日本国外の研究者との意見交換を行うことができた。くわえて、日本語での論文や編著の執筆・出版を行い、また、最終的にスペインへの渡航を実施することで対面で現地の研究者と研究分野の現状を確認するとともに、あらためて今後の研究に有益な知見を得ることもできた。本研究を通じて、フランコ独裁初期にはカトリックの信仰団体出身の平信徒が聖職者となったケースが多数みられること、政界や教育界に深い関係をもった人々とのネットワークが形成されていることを確認し、国家カトリック主義の形成に影響を及ぼした人々の歩みを跡づけることができた。彼ら・彼女らのなかには、日本を含むアジア地域で宣教活動を行うに至った人物もいること、この人々がスペインと日本の文化交流を促進する原動力となったことなど、研究開始当初には予想していなかった事実が明確に把握できたことは、今期の大きな成果である。研究課題の主目的として定めていたフランコ独裁を支えた平信徒のプロソポグラフィについては、2023年3月の研究期間終了時前には未刊行だが、研究成果が2023年春以降順次公開される予定である。
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