研究課題/領域番号 |
18K01045
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
後藤 はる美 東洋大学, 文学部, 准教授 (00540379)
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研究分担者 |
正木 慶介 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (00757172)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 公共圏 / メディア / 新聞 / 民衆政治 / 諷刺 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、17世紀から19世紀初頭の大衆出版に着目し、それを軸に展開した公共圏の形成と変容過程を事例研究を通して明らかにすることを目的とする。本年度は、代表者・後藤は本科研を基課題とした国際共同研究加速基金の助成を受けて、1年間在外研究を行うこととなった。この期間に、イギリス・ケンブリッジ大学を拠点に史資料の収集を行うとともに、2019年9月および2020年1~2月にアイルランド・トリニティ・カレッジ・ダブリン大学ロングルーム・ハブ人文学研究所に客員研究員として滞在し、同地に集まる欧米の研究者との意見交換を進めた。本年度は、王政復古期のイングランド・アイルランドの公共圏の比較に焦点をあてた。とりわけ印刷所数・流通数の限られる同時期のアイルランドとの比較のなかで、イングランドの初期公共圏の成立を可能にしたロンドンの出版環境の特殊性が浮き彫りとなった。 中間的成果は、トリニティ・カレッジ・ダブリン大学滞在中に同大学歴史学部の近世史セミナーにおいて口頭報告を行ったほか(2020年2月)、アレクサンドラ・ウォルシャム教授(ケンブリッジ大学)、ジェーン・オーマイヤ教授(トリニティ・カレッジ・ダブリン大学)から論文草稿への有益なコメントを得た。 また、研究分担者・正木慶介とは、メールでの連絡のほか、後藤の一時帰国(6月、12月)に合わせて研究打合せを行い、近世・近代の比較を進めた。討論をつうじて、とくに「大衆的」出版物の「大衆性/民衆性」をより広義で解釈する必要が確認された。この点は、来年度にさらに検討すべき課題となった。 これらをもとに、それぞれが論文の公刊(日本語、英語)を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者・後藤の1年間の在外研究の実現により、史資料の調査および海外研究者との学術交流が大幅に進展し、今後の展開に向けて足掛かりを得た。また、代表者・分担者それぞれが口頭報告を重ね、論文公刊に向けて準備が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は事例研究を優先した結果、口頭報告が中心となった。来年度は事例研究の仕上げに取り組みつつ、論文の公刊により注力したい。また、本課題を基課題とした国際共同研究加速基金と連携して海外研究者を招聘した国際セミナーを計画しているが、新型コロナウィルス感染拡大の影響が予想される。2020年度は本課題の最終年度であるが、場合によっては、翌年度への期間延長を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者・後藤の海外での史資料調査のための滞在費が別資金で賄われたため、また、客員研究員として所属した大学での電子書籍利用等によって予想以上に図書費が軽減されたために余剰が生じた。また、研究分担者・正木も、春期休暇を利用した資料収集のための渡英を予定していたが、欧州における新型コロナウィルス流行および4月からの関東圏への異動にともなう環境変化が重なり、次年度への順延を余儀なくされた。 2020年度はイギリスにおける追加の資料調査のほか、海外からの研究者招聘も見込んでおり、その関連費用として繰り越すこととする。
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