研究課題/領域番号 |
18K01047
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
兼子 歩 明治大学, 政治経済学部, 専任講師 (80464692)
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研究分担者 |
菅 美弥 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50376844)
李 里花 多摩美術大学, 美術学部, 准教授 (50468956)
佐原 彩子 大月短期大学, 経済科, 准教授(移行) (70708528)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 環太平洋世界 / 人種 / ジェンダー / LGBT / 植民地主義 / 移動 / センサス / アメリカ史 |
研究実績の概要 |
研究プロジェクト全体に関わる活動としては、2019年7月27日、明治大学にて国際シンポジウム"Critical Race/Ethnic Studies in the Transpacific World"を開催し、Ma Vang(カリフォルニア大学マーセッド校)、Kit Myers(同)、Kim Park Nelson(ミネソタ州立大学)を招聘して、ベトナム戦争期のモン族難民家族のアメリカへの移動の記憶、アジアからアメリカへの国際養子縁組に関する状況とその文化表象に関する研究報告と討議をおこなった。これらは全て太平洋を横断する国際的な人口移動である。このシンポジウムは、報告と討議を通じて、これらの移動が太平洋世界を取り巻く構造のなかで発生した非自発的移動であることを明らかにし、これらの移動に共通する人種・ジェンダー・植民地主義の力学の存在を浮き彫りにした。 各メンバーの活動としては、研究代表者の兼子歩はサンフランシスコおよびロサンゼルスにてアジア系アメリカ人LGBT活動家に関する1970年代以降の一次史料を調査し、かれらの運動における「アジア」「アメリカ」の意味を検討した。研究分担者の菅美弥は、従来ナショナルな文脈で検証されてきたアメリカ・センサス史と、出移民研究への関心が希薄となっている日本人移民・移住史をつなぐ作業を行った。その成果の一部を単著や学会等において発表した。李里花は、ハワイと日本のコリア系移民のアイデンティティと文化(舞踊を中心に)の調査を実施した。研究成果をハワイ・豪州・韓国で発表し、マイノリティ研究に環太平洋的な視点を導入するための専門家との意見交換を行った。佐原彩子は、アメリカ学会年次大会(2019年6月1日)の討論者、日本移民学会年次大会(19年6月30日)のランチタイム・トークの司会など学会活動のほか、文献や史料を引き続き研究している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクトの2年目に開催することを予定していた国際シンポジウムを予定通り行うことができ、国際養子縁組研究およびモン系アメリカ人文学研究において第一線で活躍する海外研究者との交流を通じて、プロジェクトのテーマに関する知見を深めることができ、充実した成果を得ることができた。また、このシンポジウムののち、参加した招聘研究者とプロジェクトメンバーのあいだでの協議の結果、プロジェクトの研究成果を出版するということで合意を得ることができた。現在、出版に向けた準備を進めている。 また、プロジェクトの各メンバーは、それぞれ個別の研究課題に関する一次史料の調査と分析を着実に進めており、それぞれが学会報告や論文発表・書籍出版の形で、研究成果の一部を公開することができており、プロジェクト全体の課題のための知見の積み重ねが予定通り順調に進行しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクト全体としては、2018年度の勉強会、2019年度の国際シンポジウムの成果と、プロジェクトの各メンバーの研究成果を総合し、論文集として出版するための準備を進めていくことを予定している。そのために、アメリカへの移動を通じてマイノリティ化したアジア系集団のアイデンティティや表象、抵抗のあり方を分析する視点としての環太平洋世界の構造に関する理解を詰めていくための勉強会を主に行う予定である。 各メンバー個別の課題としては、兼子歩はこれまで収集できたアジア系アメリカ人LGBT運動団体に関する一次史料を分析し、かれらのアイデンティティや運動のためのイマジネーションにおける「アジア/太平洋世界」の意味を検討する作業を進め、出版に備える。菅美弥は、個人の記録・書簡などの史料を入手・解析し、センサスをはじめとする諸史料とリンケージし、個人史からみえる環太平洋地域のマイノリティ史・アメリカ史像の検証を進める。李里花は、これまでの研究成果を論文や編著書として発表し、韓国やドイツの国際学会での報告も予定している。佐原彩子は、共著の出版2冊と論文の刊行を予定しており、それらに加えて、ベトナム出身者を中心とした難民と彼らを受け入れた側の人びとの支援活動を、本科研での史料調査を踏まえて論文にまとめる予定。 なお、これらの予定は、COVID-19の感染拡大の状況によっては一部を中止ないし変更する可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年に入ってから、新型コロナウィルスの感染拡大への懸念から、春季休業中に勉強会を再開することができず、また海外での史料調査を行う時間をとることが困難になったため。2020年度には、新型コロナウィルスの状況が落ち着き次第、研究者を招聘した勉強会や、史料調査のための出張等を行うための予算にすることを計画している。
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