研究課題/領域番号 |
18K01050
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小原 淳 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20386577)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ドイツ史 / 1848/49年革命 / 帝国創設期 / 亡命 / 転向 |
研究実績の概要 |
研究期間の三年目に当たる本年度は、昨年度から継続して、1848/49年革命に参加した革命家たちのなかでも、欧米各国に亡命した人びとを対象とした研究を行った。彼らの主たる亡命先は、スイス、フランス、イギリス、イタリア、アメリカ合衆国の各国であるが、本年度はとくにフランス、イタリアへの亡命者を中心に据えて考察を進めた。 本年度の研究においては、①彼らの生活の場だった亡命先のドイツ人コロニーや、多くの革命家が行っていた共同生活や縁戚関係、②書簡のやり取りや会合、支援団体、職業の斡旋や金銭的援助をつうじて構築される革命家たちのネットワーク、③アソシエーション、メディア、政治的イベントと示威行動といった革命家たちの活動空間の、三点に焦点を絞り、とくに、ルートヴィヒ・バンベルガーの活動を中心に、亡命者集団の知的な交流、相互扶助、亡命先の社会との交流、他地域にいる亡命家たちとの交流といった諸点を分析した。その結果、政治活動を継続した亡命家たちと、他分野、例えば非政治的な文筆業や経済界、学術、医学、芸術分野などに転身した亡命家たちの間に1850年代も継続的な交流関係があること、ドイツ出身の革命家たちの多くが亡命先の知識人と積極的に交流しつつも、ドイツ人としてアイデンティティを喪失するよりもむしろ再確認し、ドイツへの復帰を希望し続けたことなどが明らかとなった。 また、本年度は以上の研究と並行して、R・ゲルヴァルト『史上最大の革命』を訳出し、さらにクリストファー・クラーク、イアン・カーショーの近著の訳出作業を行い、最新のドイツ史研究の成果の導入、批判的考察に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はコロナ禍の世界的拡大のため、予定していた海外での資料収集活動ができなかった。そのため、国内で取り寄せ可能な外国語文献・史料の収集に力を入れたが、未刊行史料の収集はできず、その点で、予定していたよりも研究がやや遅れてしまった。 しかし、コロナ問題による研究の遅滞を埋め合わせるため、本年度は下記の5本の論文を執筆した。「<参加することに意義がある>のか―スポーツ史研究、オリンピック史研究の課題と可能性― 」『歴史学研究』1008、2021年;「関東北部に存するドイツ関連史跡の総合的検討 」『早稲田大学高等研究所紀要』 13、2021年;「東北地方に存するドイツ関連史跡の総合的検討」『早稲田大学大学院文学研究科紀要』66、2021年;「関東南部に存するドイツ関連史跡の総合的検討」『西洋史論叢』42、2021年;「北海道に存するドイツ関連史跡の総合的検討―日独関係史の再検討に向けて―」『WASEDA RILAS JOURNAL』8、2020年10月 。 これによって、一定程度の研究の進展を見ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降も、欧米各国に亡命したドイツ人革命家の研究を継続する。ただし、海外での史資料収集作業について、コロナ問題の状況を確認しつつ、柔軟に対応する必要がある。 また同様の観点から、国内での史資料収集の方途をさらに模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、海外での史資料収集ができなかったため。
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