研究実績の概要 |
研究課題遂行のため、2019年2月15日から同年3月8日までオーストリアの首都ウィーンに赴き、オーストリア国立公文書館(Oesterreichisches Staatsarchiv: Haus-, Hof- und Staatsarchiv)およびオーストリア国立図書館(Oesterreichische Nationalbibliothek: Sammlung von Handschriften und alten Drucken)にて、1760年前後に皇太子ヨーゼフ(のちの皇帝ヨーゼフ2世)への進講用に作成された、ハプスブルク君主国傘下の諸国・諸邦についての地誌テキストの分析をおこなった。 その結果、この史料群が国制・税制・軍制・経済産業・宗教・民情を主たる対象とし、官房学的な見地から作成された重要なテキストであることが確認できた。そしてその内容から、18世紀中葉には中央集権的な近代化が推進されたとする通説に反して、当時のハプスブルク政府の主導層が複合的国制の重要性を深く認識してその実態を適切に把握し、それを前提とした国政運営を基調と考えていたことを知ることができた。 また、ウィーン大学のトーマス・ヴィンケルバウアー教授(オーストリア歴史研究所所長)、オーストリア学士院のペトル・マチャ博士およびウィリアム・ゴットシー両博士と面会し、意見・情報を交換することができた。こうした交流により、彼らが進める近世ハプスブルク君主国行政史(Verwaltungsgeschichte der Habsburgermonarchie in der Fruehen Neuzeit)の刊行計画の進捗状況などを知ることができたほか、Seitschek, Franz-Stefan, Die Tagebuecher Kaiser Karls VI. Zwischen Arbeitseifer und Melancholie. Horn 2018; Preinfalk, Miha / Golec, Boris (ed.), Marija Terezija. Med razsvetljenskimi reformami in zgodovinskim spominom. Ljubljana 2018.といった重要な研究書の刊行について情報を得られたことは重要だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画時に予想していた通り、約3割程度の検討を終えることができた。また、オーストリア国立公文書館および同国立図書館のどちらにおいても、史料のデジタル撮影が広範に許可されていたことから、検討を予定していた史料のうち、2割ほどをデジタル撮影できた。 また、史料調査の過程で、関連する以下の史料2点を新たに発見し、入手もしくは概要を把握できる程度には検討できたことも収穫であった。 Bartenstein, J. J., Kurzer Bericht von der Beschaffenheit der zerstreuten zahlreichen Illyrischen Nation in kaiserlichen koeniglichen Erblanden. Frankfurt und Leipzig 1802. Mc Neny, Patrice (Hg. Beckmann, Gera), Historische und politische Nachrichten von den oesterreichischen Niederlanden. Frankfurt / Leipzig 1784.
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