研究課題/領域番号 |
18K01051
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
岩崎 周一 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (60452041)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハプスブルク君主国 / 複合君主政 / 諸身分 / 近世ヨーロッパ / 議会 |
研究実績の概要 |
2020年9月12日に木下光生氏(奈良大学)を中心とする日本近世史研究者たちが主催する「歴史学フォーラム」にて行った報告の内容を、論文としてまとめた。これは、「歴史学フォーラム2020の記録 権力の担い手を考える」に、「近世ハプスブルク君主国における王権・議会・諸身分」と題した論文となって公開された。 本論文では、近世後期ハプスブルク君主国における王権と諸身分の関係が、時々の状況や両者の力関係、そして何より利害の共通性の濃淡によって、衝突と接近、対立と協働の間を絶えず流動していたこと、そしてハプスブルク君主国が18世紀を通して危機を迎えるたび、その克服のため、諸身分の協力に多くを負っていたことを明らかにした。 また、2020年12月12日に日本西洋史学会の第70回大会近世史部会にて行った報告の内容を、論文としてまとめた。これは、『西洋史学』273号(2022年8月頃刊行予定)に、「「穏健な君主政は最上の政体」 ―啓蒙改革期ハプスブルク君主国における複合的国制と王権の諸身分認識―」と題した論文として発表される予定である。 本論文では、1760年前後に皇太子ヨーゼフ(のちの皇帝ヨーゼフ2世)への進講用に作成された、ハプスブルク君主国傘下の諸国・諸邦に関する地誌テキストを主に用いた。さらに、ガリツィアに関する近時の研究などがもたらした成果も踏まえることで、研究代表者がこれまで「地域からの視座」に基づいて進めてきた諸身分研究の成果を生かしつつ、「中央からの視座」を新たに取り込んで、王権と諸身分の関係を双方向的に捉えることをめざした。そして、啓蒙改革期のハプスブルク君主国においても、マリア・テレジアが没する1780年頃までは、複合的国制が基本的に維持・是認されていたことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までの研究成果に基づいて行った研究報告を二本の論文にまとめ、掲載を果たすところまで進めることができた。しかしコロナ禍のため、2022年2月から3月にかけて予定していたオーストリアでの史料調査が実施できず、進捗状況に若干の遅れが生じることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年4月21日現在、コロナ禍をめぐる状況は依然として厳しく、予断を許さない。またロシアのウクライナ侵攻によって生じた問題は、本研究の進展にも影響を与えるものと予想される。しかし、一昨年度に続き昨年度も果たせなかったオーストリアでの史料調査を2023年2月から3月の間に実施し、遅れを取り戻して本研究課題を完結させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、オーストリアでの史料調査が不可能となったため。 2023年2月から3月にかけてオーストリアに渡航し、オーストリア国立文書館・同国立図書館・下オーストリア州立文書館にて史料調査をおこなう。
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