研究課題/領域番号 |
18K01052
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小川 真和子 立命館大学, 文学部, 教授 (60443610)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ハワイ準州 / 真珠 / 水産業 / 核実験 / マーシャル諸島 |
研究実績の概要 |
本年度は精力的に国内外研究活動、並びにその成果報告を行った。米国ハワイ州立公文書館、ハワイ大学図書館、米国立公文書館において、20世紀中ごろに合衆国およびハワイ準州政府が取ったハワイ水産政策関連の一次資料の収集を行った。また国内では、山口県周防大島町、和歌山県南紀地方、三重県鳥羽市の水産関連機関が保有する資料収集や、ハワイとの関連がある史跡の調査を行った。その結果、特に1930年代から40年代初頭における日本―ハワイ―アメリカ合衆国間の水産業振興策の詳細や、そのころハワイで展開した日本人水産業界に関する、より緻密な知見を得ることが出来た。 これらの研究成果の一部は、単行本『海をめぐる対話 ハワイと日本 水産業からのアプローチ』(塙書房)、学術論文「元年者とハワイ―ハワイにおける日本人移民の始まりとその後」(立命館言語文化研究)に織り込んだ。またハーバード大学における研究報告"The Collaboration and Confrontation between Hawaii and Washington D.C. during the Mid-Twentieth Century over Japanese Sampan Fishing and the Exploitation of Nan'yo"にも、これらの研究成果の一部を反映させた。 さらに学術界での研究成果発信のみならず、一般向けの公演も精力的に行った。単行本の出版記念公演「教え子とともに語る本の誕生秘話」(2019年10月29日、立命館大学)では、研究の行い方、それを本にまとめる作業などについて話をした。また一般にも公開された山口大学主催、山口学シンポジウム「ハワイにおける日本人移民の始まりとその後―周防大島を中心に」(2019年12月1日 周防大島町)では、主に周防大島とハワイの水産業の間の関係について講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は一般向け学術書の刊行、学術論文の刊行、研究会及びシンポジウムにおける研究報告のみならず、一般向けの公演も精力的にこなすことが出来た。本年度に刊行した単著『海をめぐる対話 ハワイと日本 水産業からのアプローチ』は、本研究の成果を反映しており、学界のみならず読売新聞、日本経済新聞、中國新聞などの書評で好意的に取り上げられた。また山口大学主催の山口学シンポジウムにも招待され、主に周防大島町がハワイとの人的交流において、歴史的に果たしてきた役割などを紹介した。そして学術的な交流のみならず、山口県周防大島町の地域振興のための政策提言を行う機会を得た。 さらにハーバード大学の研究者が中心となって刊行を目指している研究書Oceanic Japan(仮題)の分担執筆者となった結果、同大学が主催するOceanic Japan: Environmental Histories of the Archipelago and the Sea Conferenceにも招待され、研究報告を行った。これらの国際的な活動が、さらに次年度における国際学会での報告機会の獲得にもつながるなど、本年度は国内外において研究活動の地歩を大幅に広げることが出来た。 その一方で、学生や一般向けの公演を繰り返したことによって、当研究の成果を広く社会に還元することが出来た。学術研究の一般への還元も、本研究の目的の一部である。そのため、本年度は当初の計画以上の大きな成果を挙げることができたといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である2020年度は、これまで行ってきた一次資料収集の補足作業を行う。具体的には、夏季にアメリカ国立公文書館及びハワイ州立公文書館、ハワイ大学図書館における資料収集ならびにフィールドワークを行う予定であったが、新型コロナウィルス蔓延のため、2020年4月現在において、ワシントンDC及びハワイ州は厳しい渡航制限を敷いている。そのため、これらの調査は秋以降に延期する。また、国内では和歌山県南紀地方、山口県周防大島町、三重県鳥羽市などで、補足的な資料収集、史跡調査を行う予定であったが、日本全国が非常事態宣言下に置かれているため、これらの活動は同宣言解除後に延期する。 さらに、本年度は国際学会での研究報告も目指しており、6月にフィンランドで開催されるSixth European Conference of World and Grobal Historyに参加予定であったが、既に次年度への延期が決定された。また他の国内の学会も開催が延期、もしくは中止となっている。 そこで本年度は、アメリカへの渡航制限ならびに国内の非常事態宣言解除されるまで、これまで国内外で収集した一次資料の分析や、国内で入手し得る二次資料の読み込みを中心に行う。また、すでに前年度において編者との意見交換が済んでいる共著Oceanic Japanの刊行を目指して、執筆を進めている論文の完成を目指す。 その一方で、一般向けの公演などの実現が難しいことから、ウェブ上での研究成果披露の可能性もあわせて探りたい。 このような事態の発生は、研究計画策定当初には予測していなかったが、これまでの研究成果を踏まえて、本年度は研究の完成と、その学術界、一般社会への更なる還元を目指す。
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