本研究は、20世紀前半におけるハワイの日系水産業の歴史的展開について、3期に分けて実証的に検証した。ハワイにおいて近代的な水産業が確立する20世紀初頭から1920年代、日米関係が悪化する中でハワイの日系水産業が最盛期を迎える1930年代から開戦、そして開戦時から終戦、冷戦初期にかけての、それぞれの時期について、日系水産業者が出身地である日本、ホスト側であるハワイ準州政財界やアメリカ連邦政府、議会、大統領府と、どのような関係を築きながら事業の拡大を図ったのかという観点から論じた。そして本研究はハワイの漁村というローカルな視点を出発点に、アメリカ連邦政府というナショナルな立場、そしてハワイを中部太平洋海域の中に位置づけた上で、太平洋における漁業利権をめぐって向き合う海洋国家日本とアメリカの関係という、グローバルな視点から考察した。
この研究成果は国内外における学会で報告されるとともに、単著『海を巡る対話 ハワイと日本 水産業からのアプローチ』(2019年)をはじめ、刊行予定(コロナ禍のため当初2020年刊行から遅延)の共著『Oceanic Japan』に収録予定の単著論文「Sampan and Uncle Sam: The Collaboration and Confrontation between Hawai`i and Washington during the Mid-twentieth Century over Japanese Sampan Fishing in Hawaiian waters」、単著論文「元年者とハワイ-ハワイにおける日本人移民の始まりとその後」などに結実した。
さらに上記のような学術界への貢献のみならず、研究成果の一部は一般向け公演やシンポジウムにおける報告など、広く社会に還元された。
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