研究実績の概要 |
本研究は、東アジア陶磁器貿易の実相-生産地および日本を含めた東アジア市場における消費動態とそれを通して看取される広域貿易ネットワーク形成およびその変遷-について解明することを目的とする。特に近世初期に形成された陶磁器流通日本ブロックの成立の背景において重要な消費地である江戸および東南アジアブロックの流通拠点の一つである台湾の港湾都市について考古資料の集成・分析を行った。 日本ブロックについては、近世最大の消費地である江戸遺跡について、以前採択された研究と合わせて合計で5,898例を集成を行った上で、器種、装飾、生産地、年代、出土地などについて分析を加え、日本国内における需要傾向を明らかにした(『近世都市江戸の貿易陶瓷器資料集(2)』刊行、「江戸時代の貿易陶磁器需要-江戸の状況を中心として-」『近世国家境界域「四つの口」における物質流通の比較考古学的研究』成果報告)。 東南アジアブロックについては、研究協力者と共に台湾南部の流通拠点である北港遺跡および原住民の拠点集落である淇武蘭遺跡出土資料について、江戸遺跡と同様の分析を加え、両者の違いについて分析を加えた。特に北港遺跡の資料を対象に悉皆的な分類と数量を調査を行い、提示した意義は大きい(共同研究『北港百年藝鎮再造歴史現場-古笨港遺址出土文物 整理研究、修護與專書出版計畫 期末報告』)。 これに加えて、両者の違いを明らかにするために東南アジアブロックにおける需要の主体を占める福建広東産陶磁器について、生産状況、日本国内(長崎、畿内)・東南アジア流通ネットワークとその状況を協力者から報告をいただき(琉球、沈没船)、需要や流通背景に多角的に明らかにできた(『18・19世紀の福建・広東諸窯の貿易陶瓷器』刊行)。
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