文献史料からは知ることのできないイスラーム時代最初期の旅人たちの足跡を探るため、アラビア半島ヒジャーズ地方の岩壁に残されたグラフィティ(落書きに類する碑文)の網羅的な分布調査を実施した。その結果、サウジアラビア、タブーク州南部、北部にて200点以上の初期イスラーム時代のアラビア語碑文を新たに登録するとともに、調査域内の既知のグラフィティ遺跡についても再調査を行った。これにより、遠隔地との間を結ぶ主要ルートの他、既存のルート研究ではほとんど注目されることのなかった山間の小規模のワーディー(涸谷)が近距離ネットワークの中で重要な役割を果たしていたことが明らかになった。
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