研究課題/領域番号 |
18K01063
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山本 悦世 岡山大学, 埋蔵文化財調査研究センター, 教授 (60174778)
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研究分担者 |
鈴木 茂之 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (00183418)
山口 雄治 岡山大学, 埋蔵文化財調査研究センター, 助教 (00632796)
岩崎 志保 (山下志保) 岡山大学, 埋蔵文化財調査研究センター, 助教 (30239967)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 縄文時代 / ボーリングコア / 珪藻分析 / 環境変動 / 貝塚 / 中部瀬戸内地域 / 遺跡動態 |
研究実績の概要 |
1.ボーリングコアの分析完了:仮説の補強と新知見につながるデータを得た。 岡山大学構内において2018年度に実施したボーリング調査について、同コア試料の珪藻分析と年代測定を実施した。分析は外部業者(パレオ・ラボ)に依頼し、1回目の分析結果を確認した後、追加の分析を行った。その結果、前年度実施した電気伝導率との相関関係との検討からも、既往の研究成果とは異なる環境下の状況を確認すると同時に、海水準変動に関する従来の仮説を補強するデータを合わせて得ることとなった。また、既往の土木工事に伴うボーリング成果を本調査成果に関連付けることで、更新世の古地形復元作業を実施した。 2.遺跡データベースの作成:貝塚遺跡を中心とした作業においてが新知見が得られた。 貝塚遺跡では、貝塚形成時期に関する見直しを積極的に実施し、縄文前期~後期における貝塚形成遺跡数に大きな変動が生じていない、という仮説を立てた。また、それに伴って、従来の認識以上に、貝塚形成集中域の抽出が可能となり、人口密集域の状態を鮮明化する手がかりとなった。一方、貝塚以外の遺跡データベース作成作業では、本研究対象域全体の完了には至っていないが、貝塚形成遺跡における集落形成の可能性や、中期末以降において、新たな環境に進出した遺跡と土地形成過程との関係を、一部の地域で具体的に描ける資料を蓄積することができた。 3.研究成果の学会発表:学会発表は口頭発表が5本(内1件はポスターセッション)、雑誌論文3本を数える。その多くは考古学関係学会での発表であるが、その内の1本は研究分担者による日本地質学会での発表である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ボーリングコアの分析:当初の計画以上に進展している。 ボーリングコアの分析では、既往の同調査データとは異なる環境の広がりを確認し、当初の仮説を補強すると同時に、さらに詳細な環境復元を可能とする新知見が得られた。また、完新世における地形環境復元の起点となる更新世の古地形復元を、一部地域で完了できた。以上の成果は、当初予定以上の進展となっている。 2.遺跡データベースの作成:おおむね順調に進展している。 貝塚遺跡に関しては、予定通りに、貝塚形成時期の絞り込みをおおむね終了しており、概ね順調は進展状況と言える。その中で、縄文前期~後期では安定した貝塚数の推移が確認された点は新たな知見であり、計画以上の成果となった。一方、貝塚以外の遺跡について、環境関連データの抽出が困難な遺跡が多く、集成完了には至っていないが、全体的には、作業進行状況は、おおむね順調な進展の範疇と判断される。 3.研究成果の発表:当初予定以上に進展している。雑誌論文(3本)と学会発表(5本)ともに、当初予定以上の本数となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で得られたボーリングコアの分析と遺跡のデータベースの成果を基に、環境変動と遺跡動態の関係についての仮説を検証し、総合的な評価を報告書にまとめて印刷する。その際、以下の作業を実施することで、仮説の妥当性および具体性を高める。 環境変動の検証に際しては、自然科学系の各専門分野の研究者との意見交換を積極的に進め、可能であればシンポジウムを開催する。遺跡動態の検討については、特に、貝塚遺跡の貝塚形成時期を再度チェックし、昨年度の新知見となった仮説を検証すると同時に、貝塚以外の遺跡の環境データベースを完了させ、遺跡の状態からも仮説の検証を実施する。 こうした本研究対象域全体を視野に入れた分析・検証・評価のほかに、本研究で実施したボーリング調査地点に注目し、同地域に立地する津島岡大遺跡およびその周辺域を取り上げて、環境変動と遺跡動態との有機的関連を視覚化することでモデル化を図り、具体性を高める。また、同地域における地形環境の推移を復元するために、更新世における地形復元の範囲を拡大する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度の予算はボーリングコアの分析費を中心に支出した。その結果、本研究の成果について、予想以上に充実した内容となることが判明したため、最終年度に計画していた印刷経費の枠内では、十分な報告が不可能との判断に至った。そこで、研究報告書作成において必要な頁数を確保するために、令和元年度の支出を可能な限り圧縮し、その一部を最終年度の印刷経費に繰り越すこととした。
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