研究課題/領域番号 |
18K01064
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山口 雄治 岡山大学, 埋蔵文化財調査研究センター, 助教 (00632796)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 縄文時代 / 西日本 / 人口動態 / GIS / 遺跡空間データベース / 古環境 |
研究実績の概要 |
本研究は、西日本地域における人口動態について、①縄文時代の遺跡空間データベースの作成、②居住形態と居住集団の規模の推定、③縄文時代の環境収容力の推定の3点を統合することで明らかにすることを目的としている。平成30年度は中国地方の遺跡空間データベース作成を予定していた。 本年度は予定通り、①地理情報システム(GIS)と連動した遺跡空間データベースの作成を行った。対象地域は中国地方とし、データ化の項目は位置情報、立地、時期(縄文時代草創期~晩期の型式別および14C年代データ)、遺構の構成・数、土器出土量、文献などである。概ねすべての遺跡をデータ化することができ、早期と後期初頭に遺跡数のピークのあることを改めて確認した。また住居址数や集落の状況から、②居住形態と居住集団の規模の推定に関して、ある程度の見通しをつけることができた。遺跡規模が東日本とは相対的に小規模である点や住居址の切り合いがほとんど見られない点などは、一時期の居住集団の規模の推定について少ないバイアスで復元できものと考えられる。また、岡山・鳥取両県の遺跡については資料調査を行い、資料の状況把握および時期の確認などを行った。 ③縄文時代の環境収容力推定のために、岡山平野を対象とした古環境復元を行った。岡山平野沿岸部では海進および海退による土地利用可能面積の拡大と縮小が想定される。そのため、貝塚遺跡の立地と分布、出土貝類の変遷およびKuniJiban等で公開されているボーリング柱状図のデータ化も進めた。その結果、縄文時代の各時期において土地利用可能面積に変動のあることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に予定したものは、①中国地方を対象とした遺跡空間データベースの構築のみであった。これについては一部未完ではあるものの、そのほとんどをデータ化することができた。そのため、②居住形態と居住集団の規模の推定について見通しを得ることが可能となった。また、③縄文時代の環境収容力の推定についても、岡山平野を対象として具体的に進めることができた。従って、①には若干の遅れがあるものの、②および③については計画以上に進展したため、全体の進捗状況としては概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、引き続き中国地方のデータベース構築を行うとともに四国地方の遺跡についてもデータベース化を実施する。その後、時期ごとの遺跡数と住居址数の計数結果を提示し、14C年代データによる各時期の実年数を加味・調整して真の変動を割り出す。そして当該地域における縄文時代の遺跡数や住居址数の時間的・空間的変動を明らかにする。さらに、遺構の構成やその量的変化、土器出土量の分析を通して、当該時期における居住形態を明らかにし、見かけ上の遺跡や住居址数の動態を補正する見通しを得る。分析結果を国内・国外学会にて発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、資料調査を島根・広島・山口県においても実施する予定でったが、遺跡のデータベース化が完了していなかったため、次年度に延期した。このために当該助成金が生じたが、2019年度における遺跡データベースの構築完了後に改めて資料調査を行う予定である。
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