研究課題/領域番号 |
18K01070
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研究機関 | 沖縄県立芸術大学 |
研究代表者 |
森 達也 沖縄県立芸術大学, 美術工芸学部, 教授 (70572402)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 琉球王国 / 陶磁器 / 久米島 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、コロナの影響によって資料調査や現地調査がほとんど実施できなかったが、これまでの調査の成果をまとめるとともに、沖縄県久米島の宇江グスクと具志川グスクの出土資料の再調査を実施した(旅費等の経費は別途支出)。その結果、福州と那覇を結ぶ海上ルートを考える上で久米島が極めて重要な位置を占めていることが明らかとなった。 具体的には、久米島では14世紀中頃までの遺跡でははごく少量の中国陶磁せず、先島地域より中国陶磁の出土量が圧倒的に少ないが、14世紀末に琉球が明朝に朝貢を開始したのとほぼ同時に膨大の量の中国陶磁が久米島に運ばれるようになり、首里城や今帰仁グスクの出土品に匹敵するような大型製品も出土している。こうした状況から、琉球が明朝に朝貢を開始するとほぼ同時に、それまで中国から先島を経由して沖縄本島に至っていた交易ルート(以下「南路」と呼ぶ)が、尖閣諸島の沿岸を通って久米島を経由して沖縄本島に至るルート(16世紀以降文献記録にある琉球舟や冊封船が通ったルート、以下「北路」)に変化したことが推定されるようになった。また、文献記録にある明朝から琉球への船の下賜が、この交易路の変化と関連する可能性も推定され、南路が主に使われた時代には小型船による島伝いの航行が主であったが、朝貢が開始され北路が使われる時代になると明朝から下賜された大型船によって福建を出港してほぼ無寄港で沖縄本島に至る航路が主なルートとなった可能性が高いと考えられる。 こうした内容を、令和3年2月に開催された琉球沖縄歴史学会の2月例会で、「福建・那覇間の海上ルートの考古学的研究-古琉球期の陶磁器分布の分析から-」の題で報告を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成30年度、31年度(令和元年度)は順調に調査研究を進めてきたが、令和2年度はコロナの影響で、ほとんど中国や沖縄県内離島での資料調査や現地調査を進めることができなかった。令和3年度も前半期はコロナの影響が残ると予想されるので、研究期間を延長しなければ、当初予定していた調査研究が完了しないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度後半には何とか中国や沖縄県内離島での資料調査や現地調査を再開したいと考えている。しかし、令和2年度と令和3年度前半に予定していた調査研究を令和3年度後半だけで完了させることは不可能な状態のため、研究期間を1年延長して来年度に調査研究の残りと国際シンポジウム、報告書の作成を実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響によって出張による資料調査や現地調査がほとんど実施できなかったため。研究期間を1年延長して、令和3年度と令和4年度に調査研究を実施したい。
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