研究課題/領域番号 |
18K01080
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70416410)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 考古学 / 官衙 / 宮都 / 建物配置 / 空間構造 / 饗宴 |
研究実績の概要 |
本研究は、古代宮都と地方官衙の建物・空間内でおこなわれた活動と空間利用の実態を考古学的分析に基づいて明らかにすることを通じて、「ロの字形」を呈する初期官衙の歴史的特質の解明することを目的とする。本研究では「各地の初期官衙では中央官人と在地豪族との一体感の醸成と上下関係の再確認に適した饗宴空間としての機能が期待され、「ロの字形」の建物配置が採用された」とする仮説を立て、各遺跡の遺構・遺物の検討を通じて検証をおこなうものである。 研究二年目にあたる今年度は、東日本を中心に常陸国府、下野国府、美濃国府、秋田城跡、払田柵跡などの官衙遺跡の遺構分析・実地踏査・遺物調査を実施した。 また、飛鳥・藤原地域における石神遺跡、稲淵川西遺跡、雷丘北方遺跡および平城宮中央区朝堂院地区、東院地区など古代宮都中枢部の発掘調査成果を精査し、建物配置の復元と空間構造の分析をおこなった。 これらの調査・研究を通じて、古代宮都と地方官衙遺跡の検出遺構の再検討と出土遺物の組成分析の検討事例を蓄積した。またこの検討過程で、初期官衙のみならず定型化国庁や古代宮都で多く見られる「コの字形」の建物配置の特質についての認識が深まり、「ロの字形」から「コの字形」への建物配置と空間構造の転換が、古代律令国家の支配構造の変質を反映するとの新たな知見を得た。 また、昨年度実施した宮都出土貯蔵具に関する研究の成果を論文として公表し、平城宮東院地区に関する研究成果について国際会議での研究報告および市民向けの講演会での講演をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実施計画通りに地方官衙遺跡の実地踏査と遺物調査を実施した。研究成果をまとめた論文を公表し、学会発表や市民向けの講演をおこなうなど成果の公開も順調に進んでいる。 また、初期官衙のみならず定型化国庁や古代宮都で主流となる「コの字形」の建物配置についての認識が深まり、古代宮都や地方官衙遺跡における建物配置と空間構造の転換のあり方にこそ古代律令国家の支配構造の変質を鮮明に反映するとの新たな知見を得た。宮都・官衙研究における新たな研究視点を見出したことから、本研究は当初計画以上に研究が進展しつつあるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き事例研究を進める。特に、西日本の近畿・中四国・九州地方を中心に官衙遺跡の実地踏査・遺物調査を実施する。 さらに、今年度新たに知見を得た定型化国庁をはじめとする「コの字形」の建物配置についても同様の分析を進め、「ロの字形」と「コの字形」の2つの建物配置の比較研究を試みる。そのために、初期官衙のみならず定型化国庁についても検討対象に加えて、実地踏査および出土遺物の組成分析を進める。 また、論文の執筆および学会発表をおこなうなど研究成果の積極的な公開に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入にあたり、同品質のものであればより安価な物品を購入し、専門書についても安価な古書を買い求めるなど効率的な購入計画を立てて使用した結果、当初予定額と実支出額に差額が生じた。 次年度も引き続き綿密な購入計画に基づいた効率的な物品購入をおこない、より多くの成果が得られるよう資料調査旅費・学会参加旅費に充て、積極的に調査・研究を進めたい。
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