本研究では、正倉院文書所載の食器の器名を整理し、それらを平城宮・京出土土器に対比することで、奈良時代後半の東大寺写経所(奉写一切経所)における食器構成の復元をおこなった。その結果、天平宝字年間(760年代)の東大寺写経所では、陶器(須恵器)5種類にくわえて笥(木製食器)の六器構成が用いられたことを明らかにした。 平城宮・京出土土器にかんしては計量的研究をおこない、従来の考古学的分類を参照しつつも、古代の食器分類との対照を図り、土師器・須恵器のそれぞれで椀2種・杯(つき)2~3種・盤(さら)1種を識別した。また、須恵器の大口径椀が古代の「麦椀」にあたることを実証し、その用法を明らかにした。
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