令和2年度は、令和元年&平成30年度の継続を中心に以下を実施した。 ①人工飼育および大量飼育検討(継続)、②ケブカシバンムシの製材後経過年数の産卵及び生育への影響(継続)、③ヒラタキクイムシ及びアフリカヒラタキクイムシの近親交配による消滅の可能性(継続)、について実施した。 ①について;ケブカシバンムシおよびホソナガシンクイを3種温度条件で飼育、ケブカシバンムシは30℃、ホソナガシンクイでは20℃では羽化個体が認められていない。市販濾紙を用いた採卵方法を開発し、産卵数や孵化数を確認することが可能となったものの、羽化率が低く改良を試みているが、ライフサイクルの長い甲虫であるため、継続中である。尚、両種とも現行法での大量飼育は順調、他研究者へ供与している。クシヒゲシバンムシについては採卵方法を検討しつつ、ライフサイクルを調査中である。②について;ヒノキ(高温&天然乾燥)、スギ(中温乾燥)に対して、加速劣化の有無にかかわらず、産卵し孵化幼虫が食入することが判明した。しかし、1年経過時点でフラスの排出は認められず、X-CTによる観察でも幼虫は判別できていない。微量木材成分の影響、あるいは人工飼料とは異なり栄養が不十分である為幼虫が死亡もしくは判別可能な大きさに生育できていない可能性があるので、継続して観察する予定である。③について;4種頭数区で開始、現在最多14世代目で継続中であるが、ヒラタキクイムシでは多くの区で終息している。 研究期間全体として、当初の目的であった既にある人工飼料を用いる多種木材害虫の飼育可能性をある程度確認することが出来た。ホソナガシンクイ及びケブカシバンムシについては、最適飼育温度が判明した。さらに重要な文化財害虫であるケブカシバンムシの産卵嗜好性を確認できた。
|