研究課題/領域番号 |
18K01091
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研究機関 | 東北芸術工科大学 |
研究代表者 |
北野 博司 東北芸術工科大学, 芸術学部, 教授 (20326755)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 石垣構築技術 / 石垣修理技術 / 石垣カルテ / 赤外線熱画像 / ハザードマップ |
研究実績の概要 |
基礎研究領域の石垣の伝統技術に関して、「城跡における歴史的建造物の復元と石垣の保存」「石垣裏込め等が持つ歴史情報とその保存」「公儀普請の採石技術と組織」の3本を執筆し、現在「石垣秘伝書と熊本城跡石垣の勾配」を執筆中である。 近代の石垣修理技術の研究では、収集した熊本城跡、五稜郭跡、津山城跡、篠山城跡の資料を整理中である。石垣修理が文化財修理として行われるようになった昭和40年代初めは小規模な修理工事では二又、三又、足場、丁張など、伝統的な技術が用いられてきたが、大規模工事では重機が使われ始め、一部で裏込めコンクリートが用いられるなど過渡的な様相が見られた。崩壊・変形要因を特定する調査、補強工がなかったため、現在再修理を迫られているところも少なくない。 応用研究の石垣カルテとハザードマップ作製は白河小峰城跡を事例に取り組んでいる。石垣の安定性を評価する新たな管理手法として赤外線熱画像の利用を試行しており、ボーリング調査等による旧地形データと合わせて検討した結果、背面地盤に起因する水分が石垣表面の温度に現れていることが分かった。東日本大震災では裏土の排水不良が原因で本丸南面が大きく崩壊したが、その後の復旧工事で暗渠排水が入念に施工され、この場所では熱画像に異常はなかった。今後通年観測することで、季節ごとの温度分布等を定量的に収集し、これと比較することで、石垣崩壊を招く背面土壌の間隙水圧の高まりが認識できる見通しが立ってきた。他城郭でもデータを収集している。 ハザードマップは、自然的要因(旧地形や地盤等)、歴史的要因(修復履歴)、構造要因(石垣の高さ、平面形状、断面形状(勾配・示力線))、社会的要因(利用形態)に分けてそれぞれのデータを収集している。個別表現型、リスク合算型とするか、難しい問題があり情報を整理中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究は大きく4領域あり、このうち基礎研究の2領域は前記のとおり順調に進んでいる。 やや遅れているのは応用研究の領域で、簡便な石垣カルテ作成のためのSfM-MVSによる自動描画システムについては、環境条件のよい冬場に撮影を予定していたが、外出自粛の影響で実施できていない。赤外線熱画像については、最も背面地盤が水の影響を受ける梅雨のデータをこれから取得する予定であり、真夏と合わせて通年的なデータが採取できる見込みである。 今年度の取り組みとなるハザードマップ作製は、基礎情報の収集を終えて、表現方法を模索中である。これからプロト版を作成する。
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今後の研究の推進方策 |
石垣カルテにおける自動描画システムそのものは企業においてすでに完成しているので、この部分の応用研究を縮小し、その分新たに全国で活用できる見通しの赤外線熱画像データの分析と応用研究に力点をおきたい。 基礎研究も含め、Covid-19の影響で県外出張の自粛、現地調査が十分できなかった点が課題として残るが、第2波がくるまでの間にできる限り取り戻したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費を計画的に執行したが、若干残額があり、これを次年度へ繰り越しする。
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