研究課題/領域番号 |
18K01096
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
佐藤 嘉則 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 室長 (50466645)
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研究分担者 |
小峰 幸夫 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, アソシエイトフェロー (50791985)
斉藤 明子 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (90250141)
二神 葉子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化財情報資料部, 室長 (10321556)
小山田 智寛 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化財情報資料部, 研究員 (80827931)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 文化財害虫 / DNAバーコーディング |
研究実績の概要 |
文化財の虫害を未然に防ぐ予防的保存の実践において、文化財害虫の発生を早期に把握することは重要である。本研究は、文化財害虫について形態的特徴による同定法では分類が困難な幼虫や脱皮殻あるいは排泄物から遺伝子(DNA)を抽出し、DNA情報に基づき文化財害虫を同定する手法を確立することを目的としている。今年度は、次の5つの項目について調査研究を進めた。①文化財害虫の標本コレクションの整備:日本国内で文化財への加害事例の多い昆虫(8目20科52種)の網羅的な収集を行った。収集した文化財害虫は、DNA情報証拠標本として保存整備を進めた。②標本コレクションの形態同定:収集したDNA情報証拠標本について、形態学的な特徴を記載し種の同定を行った。あわせて生態学的情報(生息地、食性など)を記録・記載し、データベース構築を進めた。③標本コレクションのDNA塩基配列解析:文化財害虫のDNA情報証拠標本から、形態分類の指標とならない体節の一部を採取しDNA抽出に供した。体長数mmの標本の節足1本からでもDNAを抽出できる標準法を確立した。④DNA塩基配列情報の登録とデータベース構築:本研究で得られたDNA塩基配列情報は、国立遺伝学研究所(DDBJ)への登録を進めた。また、国際的なバーコードオブライフ・イニシアチブにも情報(形態写真、採集データ(採集地、採集年月日、採集者名)、同定データ(分類群名、同定者名、同定年)、DDBJ登録番号、東京文化財研究所での証拠標本番号)を登録し公開を行った。⑤脱皮殻・排泄物からのDNA解析手法の確立:歩脚や翅といった体節の一部および脱皮殻からのDNA抽出は、試料が微量であるため、常法を改良した手法で検討を進めた。排泄物からのDNA抽出については、検討を重ねたが成功には至らず、種特異的なプライマーの開発し、検出感度を向上させる方法へと切り替えることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部の文化財害虫で既存のPCRプライマーでは増幅が困難なものがあり、独自のプライマーを設計する必要があったが、それ以外の収集個体では既存のプライマーでPCR増幅と塩基配列決定は問題なく進んでおり、概ね当初の計画の通りに順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
虫糞から種の同定を行う検討課題についても既存のプライマーでは増幅産物を得ることが出来なかったが、より特異的なプライマーを設計することで解決を図りたい。当初予定していた文化財害虫ではない種類の入手が出来たことからデータベースは随時更新が容易な形態で整備を進めるようにする。これまでの情報については、データベースへの登録も順次進めてきており、すでに一部は公開が行われている。次年度はWEBページを開設し、文化財害虫のデジタル図鑑と検索システムの構築を目指す。
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