本研究の目的の一つはこれまで日本では応用例があまりない、レーザー誘起プラズマ分光分析(LIBS)装置を用いて、土器・ガラスを中心に考古資料の化学組成分析を行い、その有効性を確認することにある。 今年度はポータブルLIBS装置を使用して、江戸尾張藩邸遺跡出土ガラス(東京都教育庁所管)、近世ガラス伝世品(個人所蔵)、長岡市山下遺跡出土縄文土器(新潟県立歴史博物館所管)、中国浙江省茅山遺跡出土新石器時代土器(分担者となっている新学術領域研究において現地サンプリング)などを試料として分析を行った。また標準試料NIST620、JB2、JG1を使用して、半定量のための基礎データ測定を行った。一部の試料についてはXRFの分析結果との対比を行った。 この分析法の長所は短時間で済むことであり、10秒以内で終了するため、100点以上のサンプルを半日で測定することができた。 ピーク同定、定量のための専用アプリケーションは現在メーカーからは提供されていないため、オープンソフトウェアであるSpectragryphを用い、LIBS用の調整と解析を行った。 さらに試料の表面状態が分析結果に及ぼす影響の検証も必要であるため、同じ試料で平坦面と凹凸面それぞれで計測を行って結果の違いを検証した。 ガラス分析の成果について、英国・グラスゴー大学で開催されたPost-Medieval Archaeology congressにおいて発表を行い、またオランダ・ライデン大学の考古学部にて土器分析研究室のスタッフと研究方法についての討議を行った。
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