江戸時代から明治にかけて、青森ヒバや秋田スギなどの東北産木材が日本海航路を往来した北前船で日本各地に運ばれ、寺院や神社の建築用材として広く使われている実態を明らかにするために、北前船の寄港地であった北陸地方に所在する近世建築を対象に東北産ヒバやスギのマスタークロノロジーを使い産地同定のための年輪解析をおこなった。 その結果、青森ヒバや秋田スギは新潟県:2棟、富山県:2棟、石川県:1棟、福井県:4棟の寺院建築の床板や縁板、軒天井板、建具などに使われていたことがわかった。このほかに岡山県下に所在する神社のこけら板にも東北産スギが使われており、東北産木材の流通の一端を明らかにした。
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