研究課題/領域番号 |
18K01102
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高浦 佳代子 大阪大学, 総合学術博物館, 特任助教(常勤) (10747653)
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研究分担者 |
高橋 京子 大阪大学, 総合学術博物館, 准教授 (00140400)
高橋 幸一 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (00179483)
川嶋 浩樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, グループ長 (40355615)
田中 伸幸 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40393433)
御影 雅幸 東京農業大学, 農学部, 教授 (50115193)
後藤 一寿 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 本部, 所長・部門長・部長・研究管理役等 (70370616)
松永 和浩 大阪大学, 適塾記念センター, 准教授 (90586760)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医療文化財 / 生薬標本 / 文化財科学 / 生薬 / 薬史学 / 学際的研究 |
研究実績の概要 |
大阪・道修町はかつて多くの製薬企業が居を構え、「薬の町」として発展してきた日本の医薬品産業発祥の地である。しかし、経済性の優先でこうした薬種業者の移転・縮小が続き、関連する資料・標本群は離散の一途を辿っている。こうした事態の背景には薬業に関わる資料・標本や歴史そのものの価値が理解・認識されていないという現状がある。そこで、本検討では①大阪を拠点とした製薬業関連資料の蒐集と学際的解析、②伝統薬の製剤的機能評価と剤型品質の国際比較、③生薬生産関連の消失技術の発掘と再構築を学際的な視点で行い、生薬生産や製剤関連の散逸した技術・知見の再構築を目指す。これにより、生薬遺産とも呼ぶべき資料群の歴史的価値を超越した、現代の医療・生薬施策に寄与する全く新しい視点からの意義を提起し、資料群の蒐集・保存や「歴史が存在すること」の重要性を強く発信する。 初年度は、基盤となるデータの整備と、消失技術の発掘・再構築における調査のモデルケース構築を行った。まずは、生薬標本類の基盤となるデータ作成の端緒として、研究代表者の所属機関である大阪大学所蔵の膨大な生薬標本類の整理・データ化を行った。標本類のうち、既に現在も残る製薬企業や当時の生薬研究者蒐集の標本群(中尾万三関連標本、津村研究所製和漢薬標本、イーライリリー社製標本、メルク社製標本:計約950点)については既にデータ蒐集と整理を終えていたが、それ以外にこれまで蒐集されてきた生薬標本類を科別に分類し、写真とラベル情報のデータ化による記録・整理を行った。現在も整理途上ではあるが、120科以上、4500点を超える標本を既に確認している。これら標本及びそのデータを、一部医療文化財の非破壊研究に供した。また、生薬生産関連技術の調査につき、芍薬・サフラン等の生薬について歴史文献を網羅的に蒐集・調査し、年代による栽培方法の記述の変遷等を調査・解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度途中で研究代表者が産休に入ったため、当初予定よりやや計画に遅れが生じている。 初年度中に大阪大学所蔵の標本類についてはある程度データベース化を終える予定であったが、上記理由および予想外に標本数が多く、未整理の標本が多く残っている。また、収蔵スペースについても限りがあることや、初年度中に自然災害も収蔵場所付近で起こっており(標本類には大きな被害なし)、収蔵・保存方法を改めて検証する必要があると考える。 また、当初計画していた②の製剤技術関連の検証はあまり進行しておらず、③の生薬生産技術関連についても遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、今年度より行ってきた大阪大学所蔵標本の調査・整理については、前述の保存方法の再検討も含めて、品目に優先順位をつけて行う。なるべく来歴の明らかなもの、保存状態の良いものを優先し、他の調査への応用に堪えるデータベースとしての標本整備を目標とする。加えて、道修町を中心とした大阪の薬業関連資料についても蒐集を進める。また、今年度は数品目にとどまった生産技術関連の調査については、現在の生薬国産化の動きも年頭に入れ、情報に対する需要の多い品目を絞って調査を続行する。さらに、初年度あまり進展の見られなかった製剤技術関連の検討についても、分担者等との連携を強化することで近世文献の調査を深化させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中で研究代表者が産休に入ったため、その期間に使用予定であった研究費(学会や調査で使用予定であった旅費を含む)が次年度繰り越しとなった。本年度、特に遅延している部分に重点的に人件費等で割当てる予定である。また、そのうえでも本年度は研究分担者等とのやり取りを頻繁に行い、研究をより円滑に進めるための旅費等にも一部を充てる。
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