現在、博物館で働く学芸員の約半数が期限付き非正規学芸員であることから、「守る技術」「調べる技術」「見せる技術」「伝える技術」(以下、4つの技術という)の継承が危機的な状況に陥っている。そのため、大学における学芸員養成教育方法の検討、現職学芸員への学習機会の提供と学習方法の開発による継続的な職業訓練教育(以下、継続教育という)の充実が喫緊な課題と言える。 研究初年度は(1)先行研究調査/既存資料分析、(2)「学習傾向分析」等を知るための学習履歴ログデータ収集分析方法の検討、(3)学習教材制作を踏まえシステムを開発するに向けた予備調査を行なった。2年度目は、視聴回数・時間の把握、ログ分析などを行うため、富士通のオンライン学習プラットフォーム「Fisdom」を活用し、4つの技術のうち、「守る技術」について、「梱包技術」研修会を事例として研究を進めた。受講者の「内化と外化の往還」を繰り返し行う学習活動(知識の獲得・協調活動・表出活動・リフレクション)を基に、「いつでも、どこでも受講可能」な ICT活用による反転授業のデザイン開発に関するデータ集積を行った。3年度目は「システム改善・適用期」と位置付けていたが、コロナ禍で先進事例調査や研修会開催が中止となり、研究計画を変更し、これまでのデータを分析し、学会でのオンライン発表や論文作成に注力する時間となった。そして、延長した4年度目もコロナ禍で、対面による研究教育活動がなかなかできない中、今回の研究テーマである「オンライン学習による学芸員有資格者の継続的『職業訓練教育』環境構築」に向けて、オンライン学習コンテンツを制作した。そして、最終年度は、これまで整備したオンライン学習コンテンツを広く公開していくために、広報リーフレットを作成した。 今回の研究を通じて、現職学芸員がいつでも、どこでも継続的に学べる環境整備を図ることができた。
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