研究課題/領域番号 |
18K01108
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研究機関 | 北海道博物館 |
研究代表者 |
青柳 かつら 北海道博物館, 研究部, 学芸員 (30414238)
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研究分担者 |
山下 俊介 北海道大学, 水産科学研究院, 特任助教 (50444451)
黄 京性 名寄市立大学, 保健福祉学部, 教授 (00412875)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 博物館 / 高齢者 / 地域資源 / 映像アーカイブ / ウェルビーイング / 地域学習 / 世代間交流 |
研究実績の概要 |
1.プログラム作成と評価 1)地域学習:コロナ禍で世代交流事業は中止となったが、協力機関と感染症対策を検討して一般向け行事を開催するノウハウを蓄積できた。その結果、地元紙の報道協力もあり、智恵文では昨年度を上回る参加者が得られ現役世代の参加率が増加した。参加者対象アンケート(N=19)では、コロナ禍で地域活動参加機会が減ったが、地域学習の目的5指標の高い達成、参加型行事への関心の高まり等が見られた。リピーターの獲得、参加者の多様化に応じたわかりやすい情報提供が課題である。 2)映像による地域知伝承:高齢者向け動画サービス(7件)、ウェブ(1件)の概要を調査した。その結果、高齢者向け動画には、内容の分かりやすさや明るい調子、体験談等が有効とされること、字幕の大きさ、映像展開のテンポ等の配慮が指摘されるが実証的な分析は少ないこと、映像・ネット利用の変化を加味した知見更新の必要性が明らかになった。高齢者を含む家族向け動画には実証的・実践的知見が少なかった。映像による地域知伝承実現には、複数世代の共視聴に適したコンテンツ制作指針の開発が必要である。 3)認知症予防:コロナ禍を受け、在宅で個人が実践できる観点から、健康維持・認知症予防情報の提供、漢字を書く脳活に使用できるタブレットを配布した。現在休止している今度会の活動継続のため、これら個別対応したプログラムの開発が課題である。札幌と道北の高齢者を対象にコロナ禍の影響(①健康、②健康行動・意識変容、③趣味・対人関係、④日常生活)を調査中である。 2.普及と情報発信 成果の一部を北海道博物館クロ-ズアップ展示「馬追いの道具」で公開し、地域知を青少年・一般へ普及できた(25,564人観覧)。HPとSNSページを更新し、PR機会と地元・道外閲覧者の増加等に活用できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の各項目とも、ほぼ遅滞なく実施できている。 「1.プログラム作成と評価」では、コロナ禍等によって、一部計画通り実施できない研究内容もあった。しかし困難な状況ながら、まず、感染症対策をとりながら、できるだけ安全・安心に地域学習行事を開催するノウハウや支援知を蓄積でき、協力組織・機関との連携が強化された。次に、映像による地域知伝承に関して、既存動画サービス等の調査から、高齢者向け動画制作のヒントとなる知見が得られたほか、この分野は実証的な先行研究が不足していることが明らかになった。これら代替調査から、複数世代の共視聴に適したコンテンツ制作指針の開発の重要性が確認できた。最後に、グループ活動を避け、個別対応をした在宅プログラムを実践するといった代替措置をとることで、認知症予防プログラムの取り組みの幅が拡がった。 「2.普及と情報発信」では、クロ-ズアップ展示「馬追いの道具」によって、人口稠密な道庁所在地、札幌での成果公開が実現できた。コロナ禍での開催となったが、修学旅行・現地学習等の青少年を中心に多くの観覧者が得られたほか、高齢者から本研究のアーカイブの成果が評価されるなど、地域知を広く普及できた場となった。本展示の内容は、より充実化させて、次年度開催予定の道北地区巡回展で活用し、人口減少・高齢化の進む農村地域へと普及する計画である。本年度は、同巡回展と関連講座の開催準備に着手し、開催スケジュールを含む実施要項、企画書を作成することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
1.プログラム作成と評価 1)地域学習:士別市朝日町、名寄市智恵文を拠点に、感染症動向に留意して協力組織機関と連携した行事を継続する。昭和期の年中行事と食、市街地、学校生活等を題材に、高齢者の心身の健康づくり、世代交流に役立ち、地域知を収集するサロンや体験を実施する。評価では、事業の客体である高齢者、中学生を対象に、活動目標の達成をたずねる自己評価アンケートを継続実施する。 2)地域知伝承における映像・メディア利用の有効性把握:①高齢者の映像への誘因効果と阻害要因を評価するため、過去に実施したサロン、中学生との交流学習、次年度実施するワークショップの映像記録を素材に、参加者のコミュニケーション分析を行う。②複数世代による「共視聴」実現と視聴成果の記録のため、映像資料を扱うワークショップを複数実施し、効果的な映像提示のあり方、具体的な実施方法や情報付与の手法を検討する。 3)認知症予防プログラムの実践と評価:①コロナ禍に対応し1人でも実践できる、認知症予防の個別対応プログラム、知識・助言等の提供を継続する。これら個別対応を、今度会の活動継続にもつなげる。②コロナ禍で中断した、個人的な支援のための認知症予防チェックリストの作成を継続する。③高齢者対象のコロナ禍の影響調査を継続してとりまとめを行う。 2.成果の普及 1)道北地区巡回展示会:感染症動向に留意し、4博物館・公民館(予定)で展示会「探してみよう! 地域のお宝(仮)」を会場館と共催する。オープン(7月予定)までに展示・広報物の作成、関連講座の企画、連絡調整等を行う。会期中、希望館にて関連講座を共催し、成果の普及と既述「共視聴」に関連した調査を行う。2)HPとSNSページを更新・充実化して情報発信を継続し、アクセスを増やす。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額を生じさせたのは、当初計画からの研究費減額、そして、研究分担者増員に伴う分担金支出を加味して、支出を抑えたためである。コロナ禍によって、やむなく調査計画の一部を中止、変更・順延したり、代替調査を行ったりする状況はあったものの、研究代表者、研究分担者、研究協力者等、当該研究課題関係者の努力により、研究はおおむね順調に進展している。この次年度使用額については、次年度以降の旅費、物品費、印刷製本費、研究分担金の拠出等に充てる予定である。
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