研究課題/領域番号 |
18K01110
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研究機関 | 群馬県立自然史博物館 |
研究代表者 |
木村 敏之 群馬県立自然史博物館, その他部局等, 研究員(移行) (70469881)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 3Dスキャン / デジタル標本 / コレクションマネジメント / 自然史系博物館資料 / 博物館 / クジラ類 / 骨格標本 / 化石標本 |
研究実績の概要 |
2年目にあたる本年度は昨年度に引き続き,各館に収蔵されている自然史系博物館資料の3Dスキャン作業を実施するとともに,担当者からの聞き取りを通して実際の現場における3Dデジタル標本について調査を進めた.本年度の調査は海外2機関(米国立スミソニアン自然史博物館及びカルバート海洋博物館),国内では札幌市博物館活動センターにおいて3Dスキャン並びに調査を実施した.スミソニアン自然史博物館では現生・化石クジラ類標本についてスキャン作業を行い,データの蓄積を進めた.またカルバート海洋博物館では地域に密着した博物館として活動を行っているが,調査研究のみならず普及面でのデジタル標本の活用についても模索をしているとのことであった.札幌市博物館活動センターでは,同館が発掘した大型のセミクジラ類化石について3Dスキャンを実施した.非常に大型の標本であり人力ではうごかすことも不可能であるが,3Dデジタル標本化をすることで1)研究面において標本観察の改善,2)複数の大きな部位に分断されているパーツもデジタル上であれば容易に本来の位置関係に復元出来る,3)一般の方にもわかりやすく示すことが出来る,という利点が改めて認識された.またスミソニアン博物館において行われた,博物館におけるデジタル標本についての研究集会Smithsonian Digitization conferenceに参加した.ここでは博物館におけるデジタル標本の実際の活用例についてアメリカ国内を初め各国からの事例報告が行われた.デジタル標本については,実際にどのように活用するのかという点が最も重要であり,先進館の情報が得られた. 本年度の調査研究を通して3編の論文及び2件の学会発表を実施した(業績リスト参照).また一般及び博物館関係者への普及活動として,一般向けの普及講演会(「標本のデジタル化とこれからの博物館」)を当館において実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き,実際のスキャン作業を行いつつ現場での各機関の担当者から聞き取り調査を並行して進めることで,技術的な課題についての調査とともに実際の現場におけるコンセンサスについて調査を進めた.特にスキャンしたデータの取扱については,各収蔵機関においても十分な議論が行われていないことが明らかとなった.技術的な面では特に大きな問題は見られないことから,今後も引き続き国内外の様々な機関において3Dスキャン並びに聞き取り調査を進めていく予定である.ただし,本プロジェクトにおいてパイロットケースとしての実施を想定しているクジラ類タイプ標本データベースの整備を想定していた.しかしながらスキャン後のデータの利用や取扱においてコンセンサスがなく,収蔵機関により判断はことなる.したがってタイプ標本ではなく現生クジラ類骨格標本に対象の変更も考えている.また,データベースとしての公開についてもその方法の詳細について検討をする必要がある.これらについては今後も引き続き各機関との調整を進めていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も引き続き国内外の多くの機関において継続的なデータ収集,並びに聞き取り調査を進めることで,データの蓄積をはかっていく.特にパイロットケースとして考えていたタイプ標本にこだわらず,クジラ類骨格標本を対象としてスキャン並びに調査を進める.前述のように特に公開・利用についてはコンセンサスがなく,収蔵機関により判断はことなる.したがって当初のデータベースとしての公開についてもその方法の詳細について検討をする必要がある.また,特にデジタル標本の公開については,その方法についても近年様々な方法が試みられている.自然史系博物館資料として,効果的な利用,研究への活用などの視点から,単にデータの蓄積のみではなく公開方法についても検討を今後進めていく必要がある.
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