研究課題/領域番号 |
18K01113
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研究機関 | 滋賀県立琵琶湖博物館 |
研究代表者 |
中野 正俊 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 特別研究員 (40443460)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 新学習指導要領 / 博物館・学校連携 / 博物館・地域連携 / 主体的・対話的で深い学び / 科学的に「読み解く力」 |
研究実績の概要 |
現行の学習指導要領は、10年前に改訂され、「脱ゆとり」と基礎学力の向上が目指されてきた。令和2年度から施行される新学習指導要領は、博物館や地域住民、民間企業、大学等 との連携が重視される。本研究の3年間は、まさに博物館・学校・地域等連携において新たな流れをつかめるかどうかの岐路と なっている。この機会をとらえ、本研究課題では、博物館・学校・地域等連携が決して特別なものではなく、どの学校やどの地 域等でも実践できる、例えば、教科書に紹介されるような当たり前の、普及性のある取組へ高める。 新学習指導要領は既に公示されている。そこで滋賀県立琵琶湖博物館で考案した体験学習のうち、新要領理科の内容に合致、または改良によって新開発できると考えられるものを整理していった。また、研究協力者との連携を軸に、地域の学習ボランティアや理科、環境学習にかかる民間企業と協力し、新要領に添った次の学習を試作することができた。 そのうち小学校第6学年理科「地球に生きる」の学習について、地域学校協働本部からの支援に加え、地元企業、社会教育施設(博物館)と学校が直接的、間接的に関わり、児童による主体的な学習を試作し、予備実践を行った。その結果、児童による対話的な関わりが展開し、習得・活用・探究をプロセスとした深い学びへの一歩を踏み出すことができた。今回の学習では、子どもたちは自らの予想と観察した事実に違いがあった。これによって、児童一人ひとりに概念的な葛藤が生まれ、問題解決への意欲が高まっていた。ただ、学習課題に対しては、何を明らかにするために課題を解決しようとしているのか、どんな結果が出たら何が導き出されることになるのか、これが生活場面にあった場合、どう生かしていけるかといった視点に弱い傾向が見受けられた。次年度は、こうした傾向を改善できる教材開発を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の博物館、学校、地域連携は、地域学校共同本部が手配した地域の方から「かつて地域で見られた生き物たち」について、また、参画した企業から「淡水魚をなぜ繁しょくさせようと取り組んでいるのか」についてわかりやすく説明していくといった実践的研究となった。その後、ビオトープから移した淡水魚を観察し、実際のビオトープを見学した。質疑応答の時間では、子どもたちからは「自然に繁殖させることがどれだけ難しいのですか」、「ふ化に成功したら昔の環境に戻ったことになるのですか」といった質問があった。 こうした学習は、学校ブログによって紹介された。これを読んだ保護者の方が、子どもたちの地域学習に対し喜びの声を寄せてくださった。今後も、地域のさまざまな立場の方々と関わり、地域素材を生かして学べるような機会を取り入れようと考えている。 今回、事前の学習および地域と連携した学校連携をとおし、児童による問題追究への態度が見られ、主体的に学習に取り組む様子がうかがえた。また、各班で積極的に話し合う姿や学芸員などへ質問する姿から、対話的な学びが少しずつ進んでいると考える。 ただ、児童のふりかえりカードには、将来を見すえた記述は少なかった。本実践の課題として、今学んでいることが自分の将来にどう関わり、どう役立てることができるのか、といった意識づけや声かけが十分ではなかったことが挙げられる。単に地域を通して学ぶのではなく、地域から自分に落とし込んでいくような手立てを取り入れる必要があったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度で施行される新学習指導要領を一言で表せば、「つながる」だと考える。それは、博物館が学校や地域等とつながることはもちろん、各教科等をつなげて、学校側とともに横断的な教育課程を作ることである。連携する学校や地域の特色を生かし、育てたい子ども像と学習のねらい等を地域等と共有する。ここから児童にとって必要感のある主体的・対話的な学びが進展し、深い学びは具体化するのではないか。今後も児童の資質・能力をより高めるため、本研究をさらに加速させなければならない。そのためにも、国内の先進地域を視察し、そこで得た知見をさらに整理して、改善していく必要がある。 しかし、研究初年度として他地域への視察や調査が予定通りに進んだとは言えなかった。そもそも博物館事業の教育普及を学習指導要領の観点から探っていく研究は皆無に近い。それが、本研究で求められる価値である。その価値は、まず全国で地道に進められる実践をつぶさに拾い上げ、整理することが礎となっている。それが、研究初年度においては十分とは言えなかった。したがって、研究2年度は当初計画に挙げていた他地域での実践を調査することをベースとして、新しい指導要領への裏付けを図っていく。新しい学習指導要領の考え方や理念を博物館の教育普及活動に生かす本研究の特色を、さらに全面的に押し出していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
学習活動の整理と改善、ならびに、改善した学習活動を活用した予備実践は進んだものの、先進地域・学校、先進的な取り組みを行う自然史系博物館ならびに博物館相当施設、および地域への視察が計画通り進まなかったことが理由として挙げられる。
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