昨年度までの研究で、文書館における臭気の主原因であるポリスルフィド類(研究課題明ではチオール類となっているが、本研究により文書館における臭気の主原因はポリスルフィド類であることが判明している)を除去する除去剤の開発に成功した。銀吸着セピオライトからなる除去剤は粉末状で、そのまま用いればポリスルフィド類を除去できたが、紙に漉き込むとその性能が失われたため、今期はその改良を試みた。しかし、水道水ではなく蒸留水を用いて洗浄する(水道水に含まれる塩化物イオンと銀イオンが反応する可能性を考慮)、遮光する(銀イオンが光により還元され銀単体になることを考慮)などの対策を試みたものの、改善は見られなかった。過去の研究で、揮発性物質を効率よく除去するためには、紙に漉き込むなどの方法で面積を広く取ることが有効であることが示されており、除去剤を団粒構造にして空気清浄機に組み込むなどして空気を循環させることで効果を示すことが可能と考え得られる。また、銀吸着セピオライトに比べると性能は劣るものの、銅吸着セピオライトもポリスルフィド類を除去できることが示されているため、銅吸着セピオライトを紙に漉き込むことで改善が可能と考えられる。 研究期間全体を通して、文書館における臭気原因はこれまで知られていたチオール類ではなくポリスルフィド類である可能性が高いことが判明し、ポリスルフィド類を吸着する吸着剤の開発に成功したことが成果である。
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