2019年度は,山頂を定義するスケールによって,抽出される山頂の地形とその分布がどのように異なるか,をあきらかにするために,高解像度のDEM(数値標高モデル)を用いて,異なるスケールで山頂を抽出して,その周辺の起伏と傾斜を計測した.2018年度には,半径1 kmの円内の中心点が,その円内で最も標高が高い場合に,その中心点を山頂と定義したのに対して,2019年度は,半径10 kmの円で山頂を定義した.そして,その円内の最高点(中心点)と最低点との標高差を起伏とした.また,その円内の傾斜を30 mメッシュで算出して,その平均値を平均傾斜とした. 分析の結果,著しく起伏が大きい山頂は,主にヒマラヤ山脈に分布し,それに引き続いて大きな値の山頂は,環太平洋地域とアルプスーヒマラヤ地域,天山山脈に分布する,という傾向がみられた. これは,変動帯に位置する山脈あるいは高標高の山脈には,起伏から見ても平均傾斜から見ても,険しい山頂が分布することを示す.このような傾向は,半径1 kmの円で定義した山頂と同様のものであり,異なるスケールで見ても,険しい山の分布は同様であることを示す.ただし,半径10 kmで定義した山頂と半径1 kmで定義した山頂では,起伏も平均傾斜も値は異なり,起伏は半径10 kmで定義した山頂の方が大きいのに対して,平均傾斜は半径10 kmで定義した山頂の方が小さくなる.スケールによる値の違いの程度は地域によって異なり,半径10 kmで定義した山頂と半径1 kmで定義した山頂の平均傾斜の違いは,急峻な氷河地域では大きく,深いV字谷が発達する地域では小さい,という傾向がみられた.これは,緩傾斜な谷底が氷河地域では広いのに対して,V字谷では狭いため,と考えられる.
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