研究課題/領域番号 |
18K01121
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
黒木 貴一 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (40325436)
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研究分担者 |
後藤 健介 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (60423620)
宗 建郎 志學館大学, 人間関係学部, 准教授 (60713683)
池見 洋明 日本文理大学, 工学部, 准教授 (90380576)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | GNSS / UAV / SfM / 地形区分 / 火山山麓 |
研究実績の概要 |
未離水面認定には標高変化を確実に把握する必要がある。2年目に当たり,標高変化が確実に定常的に大規模に進んでいる桜島を対象に,標高変化を捉える手段の空中写真やLPデータを用いた1)-3)の方法によりに地形及びその変化の特徴を整理した。それぞれ1)国土地理院の空中写真による約50年間,2)LPデータによる約10年間,3)UAVのDJI Inspire 2 Droneで取得した空中写真による標高とLPデータによる1年間,の標高変化を見た。1)と3)では昨年導入したGNSS受信機Trimble R2を現場活用した。1)では,1975年及び2016年撮影のカラー空中写真にて3Dモデルが,GCP誤差が最大約1mで比較的よく形成された。その結果,扇頂部を中心に土砂が蓄積する標高変化の傾向や溶岩が段丘状に残る状況を識別した。2)では,1)で見た傾向に加え標高変化の少ない場所と放射状に形成された標高上昇域を確認した。3)では,2)で見た傾向の中,離水したように見える標高変化の少ない場所でも,土砂移動がある状況を確認した。これより火山山麓扇状地の約50年間の発達過程の中で,観察時間と解像度に合わせて,離水状態の場所をそれぞれ識別できる可能性を示した。 谷底低地に対しては,最近浸水被害が頻発する筑紫平野において,自然災害に対し安全と言われる神社100社以上の奉納物を対象に,未離水面に多い水害を中心に自然災害記録の検討を開始した。 一般山地の山麓に対しては,令和元年台風19号による周氷河性斜面に生じた斜面崩壊地を中心に,斜面安定性の検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,火山山麓,一般山地の山麓,谷底低地で,地質年代から見て時間内に,標高変化の激しい場において未離水面の抽出を目指す当初計画で,1年経過時に地形変化の激しい火山山麓に重点を置く若干の修正をした。修正された計画はある程度達成できたが,以下の背景から十分に達成できなかった点が残った。1)桜島での定量的な標高変化検討は,観察の期間と空間解像度の条件別に判断が変わる事が分かり,離水と未離水の認定に関し整理することが難しくなった。このため,時代ごとの土砂移動の量と形式とを合わせて再確認する必要が残された。2)モノクロ空中写真では,十分に現実的な3D地形モデルを全体では計算できず,標高変化の検討に組み込めなかった。さらに3)火山山麓扇状地での検討に時間を要し,一般山地の山麓及び谷底低地での検討が遅れ,年度後半にようやく開始でき現地確認に赴いているが,地理情報化など定量的な検討にはまだ至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
火山山麓の未離水面の検討は,桜島で再度UAVによる計測を実施し,10の0乗年でみた場合の土砂の移動状況と離水と未離水との関係を明らかにする(池見先生)。 昭和溶岩噴出後の土砂堆積と侵食を考慮した地形発達史をまとめ,10の1乗年で見た離水と未離水の評価を試みる。ここではリモートセンシングによる植生状況も加味する(後藤先生)。 谷底平野の検討は,2017年九州北部豪雨で被災した谷底低地を対象予定の所,復旧が進み植生回復も早く自然状態を観察しにくくなった為,より平野部の筑紫平野及び熊本平野(研究代表者及び宗先生)での検討に若干修正する。そこでは文書記録が十分ではない10の2乗年で見た場合の未離水面で生じる水害記録に関し,神社奉納物を対象とした抽出方法を検討する。 一般山地の検討は,丸森町の周氷河性斜面に関して追加調査を行い,10の4乗年で見て離水している斜面内で生じた斜面崩壊現象の地形学的な意味を検討する(研究代表者)。 最終年度のため,以上の検討結果を統合して地形発達史をまとめ未離水面の評価を行い,最後に各研究成果を基礎とした報告書を作成する(研究代表者を中心とする全員)。
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次年度使用額が生じた理由 |
1昨年の遅れがそのまま継続しており,また旧バージョンのSfMで対応したことで新バージョン新規購入が遅れた。さらに年度最終予定の研究発表への旅費が学会休止により執行できなかった。 昨年度の未使用分は令和2年度前半に,桜島や丸森での研究成果また本研究に関わる研究成果を発表するための予算として主に使用する。また空中写真での標高解析を再度試行するため,新バージョンのSfMを購入する予定を組む。 なお本年度の予算は,現地調査での旅費,SfM,空中写真,学会発表経費等への使用が見込まれる。
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