研究課題/領域番号 |
18K01123
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
苅谷 愛彦 専修大学, 文学部, 教授 (70323433)
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研究分担者 |
山田 隆二 国立研究開発法人防災科学技術研究所, マルチハザードリスク評価研究部門, 主任研究員 (70343762)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 深層崩壊 / 高精度編年 / 酸素同位体比年輪年代 / 地すべり / 歴史地震 / 第四紀 / 地形学 |
研究実績の概要 |
前年度までに記載や採取が完了した山梨県韮崎市ドンドコ沢の大規模斜面崩壊物質に含まれる大径樹幹化石について、酸素同位体比年輪年代の解析が完了した。西暦887年にこの崩壊が起きたと考えても矛盾がない枯死年代が得られた。同年には駿河-南海トラフを震源域とする海溝型巨大地震(仁和地震)が発生しており、同地震が崩壊の誘因であったとする研究代表者らの仮説を補強する重要なデータとなった。他方、この巨大地震に誘発された内陸直下型地震による崩壊発生の可能性もまだ排除できないため、研究グループ内で慎重に議論を進めている。 また岐阜県郡上市水沢上において、16世紀末の内陸直下型地震で発生したと考えられている大規模崩壊性の堰き止め湖沼堆積物から大径樹幹化石を採取し、放射性炭素年代と酸素同位体比年輪年代を測定した。いずれも庄川断層帯等を起震断層としたらしい西暦1586年天正地震前後の年代を示したが、試料産出層が堰き止め湖沼堆積物であるため化石化過程の自由度が大きく、同崩壊と歴史地震との精密な対比には至っていない。なお、令和元年秋には同地において現地討論会を開催し、大学研究者らの参加を得て意見・情報交換を行った。 この他、良好な試料採取のための準備や、試料採取方法の改善のために、長野県小海町・八ヶ岳稲子岳大規模崩壊物質(既往研究では仁和地震を誘因とする仮説が提出されている)とそれに含まれる大径樹幹化石の再検証を試みた。また新潟焼山において、完新世火砕流物質に含まれる炭化大径樹幹の検分も行った。 研究成果は「山の科学」や「地理」などで公表し、日本地理学会や日本地球惑星科学連合大会、歴史地震研究会、日本山の科学会等において口頭またはポスターで発表した。なお、連携研究者の木村 誇を筆頭に、研究代表者・分担者が連名著者となった日本地すべり学会誌掲載論文が同学会賞を受賞し、2019年大会で表彰された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の国内留学からの本務校復帰や、連携研究者の異動などがあり、研究時間の捻出に苦労した。しかし数回の共同野外調査や単独野外調査が実施でき、試料も順調に採取できた。また新たな試料採取に向けた予察調査にも着手し、令和2年度の試料採取や分析に向けた道筋をつけることができた。年代測定についても大きなトラブルはなく、データが順調に得られつつある。 成果も複数の学会であいついで発表され、関連分野の研究者との間で情報・意見交換を行うことができた。 一方、これまでの検討事例(予察調査を含む)がドンドコ沢、水沢上、八ヶ岳、安倍川および七面山にとどまっており、さらにデータを増やす必要性がある。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度には、入手済み試料の年代測定や各種分析を精力的に進める予定である。その際、令和元年度に予察調査を行ったいくつかの地点で本格的な野外調査を実施し、良好な試料の採取をめざす。また研究成果のとりまとめと公表に向けた準備を進める予定である。 ただし、令和2年度当初の時点において、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言(外出自粛要請)が発出されており、本研究にかかる野外調査の実施見通しが立っていない。今後の事態推移を慎重に見きわめ、研究を着実に遂行してゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本務先の経常研究費や他の研究助成金が得られたため、外部委託の年代測定費や謝金、国内出張旅費等の一部をそれらから支出できた。また令和元年度下半期に予定していた野外調査の一部が新型コロナウィルス感染拡大の影響で延期となったため、国内出張旅費や年代測定費、謝金(学生アルバイト)の年度内支出が行えなかった。
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