研究課題/領域番号 |
18K01125
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
矢ケ崎 典隆 日本大学, 文理学部, 教授 (30166475)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 移民 / 砂糖 / 南北アメリカ / サトウキビ / テンサイ / グローバリゼーション |
研究実績の概要 |
グローバリゼーションに伴って世界と世界の諸地域はダイナミックに変化しており、地域変化を認識し、そのメカニズムを解明することは地理学の課題である。グローバリゼーションの研究動向を概観すると、グローバルスケールにおける政治、経済、社会に焦点を当てて世界像が描かれる一方で、グローバリゼーションの影響を受けて変化する地域像は十分に解明されていない。本研究は、グローバリゼーション・ローカリゼーションの地理学の考察の枠組みを用いて、南北アメリカの砂糖と移民を研究対象とする。資本・製糖工場・原料調達・労働力に着目して製糖地域の特徴を解明するとともに、製糖地域間の関係や、グローバルな生産・消費の動向との関連性を考察する。ローカルスケールの事例研究と、砂糖をめぐるグローバルスケールの動向を関連付けて考察することにより、グローバリゼーション研究と砂糖・移民研究に新たな知見を付加することができる。 今年度は、アメリカ合衆国を対象として、現地での資料収集を3回行った。すなわち、アメリカ西部のテンサイ糖地域について、ユタ州、アイダホ州、ワシントン州を対象とした資料収集、アメリカ南部のサトウキビ糖地域について、テキサス州とルイジアナ州を対象とした資料収集、グレートプレーンズのテンサイ糖地域について、コロラド州を対象とした資料収集である。研究成果の一部は、歴史地理学会大会(アメリカ合衆国ユタ州・アイダホ州におけるテンサイ糖産業と移民)及び日本地理学会春季学術大会(アメリカ合衆国におけるテンサイ糖工場の立地と移動)として発表した。また、グローバリゼーション・ローカリゼーションの考察の枠組みについては、「甘さの地域構造を探る―砂糖をめぐるグローバリゼーションとローカリゼーション」地理空間11(1)、1-17として公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行するために、現地における資料収集は中心的な研究活動である。今年度は、アメリカ西部のテンサイ糖地域について、従来の研究成果を踏まえて資料収集を行った。コロラド、ユタ、アイダホ、ワシントンの諸州においては資料収集をほぼ完了することができた。また、アメリカ南部のサトウキビ糖地域については、テキサス大学(オースチン)及びルイジアナ州立大学(バトンルージュ)の図書館・資料館で基本文献や一次資料に目を通すことができた。また、ミシシッピ川下流部ではサトウキビ糖地域の現況(サトウキビ畑と製糖工場の立地)を確認することができた。ユタ・アイダホ州のテンサイ糖産業について、またアメリカ合衆国のテンサイ糖工場の立地動向については、研究成果の一部を学会発表することができたし、グローバリゼーション・ローカリゼーションの地理学については、考え方の枠組みを論文として公表した。なお、コロラド州のグレートプレーンズのテンサイ糖産業と移民については、学会誌への投稿論文(アメリカ合衆国コロラド州サウスプラット川流域のテンサイ糖産業と移民)を執筆中であり、次年度中の公表を目指している。以上のように、アメリカ西部のテンサイ糖産業については地域像と全体像が明らかになった。今後はサトウキビ糖地域について重点的に資料収集と検討を進めるつもりである。以上から、本研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、アメリカ南部におけるサトウキビ糖産業について、本格的な資料収集を実施する計画である。特にミシシッピ川下流部を対象として、ルイジアナ州立大学図書館での資料収集を継続するとともに、製糖シーズンに現地調査を企画している。また、ハワイについては、サトウキビプランテーションと日系移民について、従来の研究成果を踏まえて検討する予定である。そのために、ハワイ大学図書館での資料収集を計画している。これらの成果を踏まえて、アメリカ南部とハワイというアメリカのサトウキビ糖地域の動態的関係を考察する。 最終年度には、西インド諸島とブラジル北東部を訪問して資料収集にあたる。ブラジル北東部については1990年代に調査をした経験があり、かなりの資料を収集済みであるので、そうした資料をグローバリゼーション・ローカリゼ-ションの地理学の枠組みで再検討する。また、西インド諸島については、以前に訪問したキューバでの経験を踏まえつつ、ジャマイカやバルバドスを訪問して、かつて繁栄したサトウキビ糖地域について理解を深める予定である。また、西インド諸島の砂糖とアメリカやヨーロッパとの関連について、主に文献資料に基づいて考察を進めたい。 以上の研究結果をまとめて、砂糖と移民のグローバルシステムの形成と動態について考察する。その際に、私がかつて提示した南北アメリカの三つの経済文化地域(北西ヨーロッパ系経済文化地域、イベリア系牧畜経済文化地域、プランテーション経済文化地域)のモデルとの関連性を意識しながら、考察を行う計画である。なお、研究成果については、学会発表や論文として逐次公開する予定である。
|